米カリフォルニア州政府が自動走行車に「待った!」

ロボティア編集部2015年12月19日(土曜日)

 米カリフォルニア州が自動走行車(自律走行車=無人車)を開発している企業に「待った」をかけた。その危険性を勘案し規制案を用意しているという。

 12月16日、欧米主要メディアは米カリフォルニア州車両管理局(DMV=The California Department of Motor Vehicles)が、自動走行車に関する新たな規制案を用意していると伝えた。同報道によると、新たな法案には、自律走行車にもハンドル設置を義務付ける、また運転免許証を所持した運転者が搭乗しなければならないなどの事項が組み込まれる予定となっている。

 つまり、同法案が施行されれば、自動走行車はドライバーなしではカリフォルニア州の管理する公道に出ることができなくなる。

 加えて、同本案にはメーカーから独立した検証者が安全性試験を実施し、製品を認可する必要がある旨を盛り込むと予想されている。しかもこの認可は、メーカーが3年間の運行許可証を受け消費者にリース(貸出)することができるという限定的なもので、すぐさま販売できる認可ではない。3年間の間、メーカーは自動走行車の性能と安全運行状況を点検し、州に報告する責任を負わなければならない。

 DMVが、このような法案を準備しているのは「自動走行車が安全性は完全ではない」という世論が大きかったためとみられる。ただし、自動走行車を開発しているメーカーの反発も少なくないと予想されており、DMVが設うけようとしている法案が施行されるか否かは、もう少し見守らなければならないという指摘もある。

 実際、メーカー側からは草案段階の規制案が厳しすぎると異議を提起するものと予想される。例えば、GOOGLEはすでにコメントを通じて「カリフォルニア州の規制は、事故防止、および運転できない人のモビリティーを向上させる技術進歩に対して歯止めをかけるものだ」と反発してしている。

現在、GoogleやApple、テスラ、ウーバー、トヨタ、ゼネラルモーターズ、BMW、ボルボなど10数企業が自動走行技術を開発しており、2020年には製品販売を目指しているとされる。

自動運転カリフォルニアトップ
photo by DMV

 日本の関係者によると「日本国内の法整備もアメリカや国際社会のルールに後押しされる形で整備される可能性が高い」という。これまで、自動走行に関しては「前向き」と考えられていた米国から、自動走行の趣旨を“曲げる”規制案の存在が浮上したのは特筆すべきことだ。今後、日本の法整備にも影響を与えることになるのだろうか。

 なお、規制案にサイバーセキュリティー対策を義務付けた条項が入っているのは見逃せない。自動走行車のハッキングへの懸念はかねてより表明されており、企業にとっては新たな課題となりそうである。

―DMVが発表したガイドラインの内容は以下の通り

①メーカーから自動運転のトレーニングを受けたドライバー(免許保有者)の乗車を義務づける。ドライバーは、DMVからトレーニング受講を証明する書類を取得する必要がある。

②メーカーは、DMVなどの定める安全基準を満たしていることを証明する証書を取得、加えて第三者が実施する検査に合格する必要がある。検査に合格したメーカーには3年間の期限付きで運行に関する許可証が発給される。

③運行許可証取得の条件として、対象となる自動運転車の月間利用状況および安全に関する報告の提出が求められる。

④自動車メーカーが車両の安全に関するもの以外のデータを収集する場合、これをドライバーに開示し、同意を得ることが求められる。またサイバー攻撃や他の不正侵入などを検知する自己診断機能を車輌に搭載することなどが義務づけられる。

photo by plateshack.com