アンドリュー・マカフィー「ロボットと組める人間が世界を支配」

ロボティア編集部2016年2月4日(木曜日)

 ロボットの発展で人間の仕事がなくなるという統計が、世界の主要な機関および団体から続々と発表されている。そんななか、「ザ・セカンド・マシン・エイジ」の共同著者であるアンドリュー・マカフィー(andrew mcafee、上写真)氏の発言が注目を集めている。

 マカフィー氏は米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院教授および、MITデジタルビジネスセンターで主席研究員を務める人物。2009年から、MITで情報技術が経済や社会をどのように変化させるか研究してきた。また彼は、ダボスフォーラムやテッド(TED)など国際会議で演説した経験も持つ。

 マカフィー氏は欧米メディアに対し、技術の爆発的な発展が数多くの専門家を失職者に追いやり、労働市場と中産層の経済に大きな混乱を与える可能性があるとし、機械と相互補完できる能力を育てなければならないと警鐘を鳴らしてきた。

 一方、先日行われた「chosun biz」の取材に対しては、より詳細に、またポジティブな話を展開している。例えば「機械と競争して人間は勝てるのか」という質問に対しては次のように答えている。

「そもそもなぜ、機械と競争しなければならないのでしょうか?機械と戦おうという姿勢からして、まず間違っていると思います。人間が機械を正しく活用すれば相乗効果を得ることができる。例えば、チェスの世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフが、1997年にスーパーコンピュータ『ディープブルー』に敗れた際、人々はその後のチェスゲームの勝者はすべてコンピュータになると決めつけ、興味を失ってしまった。しかし、機械と人間がチームを組んで自由に競争するフリースタイルのチェス大会では、結果はそうはならなかった。

2005年以降のチェス大会は、人間と機械、機械と機械、人間と人間など様々な組み合わせでチームを構成することができるようになりました。そのなかで、人間がコンピュータプログラムのアドバイスを参考にする“人間と機械の混合チーム”が、最も強力なコンピュータと対戦しても勝利を収めています。(中略)”弱い人間“と”普通の機械“の組み合わせが”最高のパフォーマンスを持った機械“だけでなく、”強い人間と普通の機械“の組み合わせよりも秀でることができると証明したわけです」

チェスロボット_人間と協力
photo by tested.com

 続いてインタビュアーの「それでは、機械と人との協力、すなわち機械を上手く利用する人が最も強くなるという話でしょうか」という質問に対しては次のように回答した。

「人間が技術を正しく理解して活用すれば、技術そのものよりも大きな力を生み出すことができます。チェスの専門家でなくとも、コンピュータや最先端プログラムを利用すれば、チャンピオン相手に勝利することができます。(今後、人々は)技術を活用し、新しい戦略を作り、革新・イノベーションを成し遂げる能力を育てなければなりません。さきほどお話したカスパロフは、『双方に分析を支援する機械が付く場合、どちらかの人間が、いつ新しい着想をできるかで状況が変わる』と言ったことがあります。機械ができない活動にはひとつの共通点があります。

新しいアイデアやコンセプトを思い浮かべることつまり、アイディエーション(ideation)です。単語のような既存の要素を新しく組み合わせるなどの行為は、コンピュータプログラムにとって非常に簡単です。また、さまざまな状況でシナリオごとに確率を計算することも難しい作業ではありません。しかし、それらの組合せが、どのような意味を持つのか判断するのは、まだ人間の役目です。

多くの人々が私に、これから技術が発展しても、価値を失わない人間の機能と能力は何なのか尋ねます。そして、ほとんどの機械ができない領域、人間だけができることが何なのか悩んで探そうとしています。しかし、私はあえてロボットと競争しなければならないという偏見を捨てなさいとアドバイスしたいと思います。むしろ、人間だけが持つ創造性は、機械と出会った時により輝くと考えています。今後、世界は技術を正しく活用することができ、それにより斬新な戦略を考えだすことができる人材が支配することになるでしょう。未来学者ケビン・ケリーはこう言いました。『今後、ロボットとどれだけ協力するかによって、年俸が変わるだろう』と」

配膳ロボット
photo by businessinsider.com

 マカフィー氏は、さまざまな報告書によって指摘されはじめたホワイトカラー職の喪失についても言及している。

「2006年に一般公開されたホンダのヒューマノイドロボット・アシモ(ASIMO)を覚えていますか?アシモはデモンストレーションの際、ステージに設置された階段を歩いて登ぼろうとしましたが、転げ落ち、床に顔を打ちました。もちろん、再び立ち上がって階段を上下したり、ダンスを踊ったり、サッカーボールを蹴るなど、さまざまな能力を披露しました。が、ロボットには大きな欠陥があるのが明らかになった。

けがの危険に直面したとき、頭のような重要な部位を本能的に包み込むなど、人間が当たり前に取れる行動をロボットは行うことができないのです。つまり、人間にとってあまりにも自然な行為が、ロボットには大変難しいということです。ロボット工学者ハンス・モラベック(Hans Moravec)は『知能検査やチェスで大人以上の性能を発揮するコンピュータを作ることは比較的簡単だが、知覚や移動能力の面で1歳の赤ちゃんの能力を備えたコンピュータを作ることは困難または不可能である』と言ったことがあります。これは、『モラベックのパラドックス』と呼ばれています。

人工知能・ロボット工学の研究者たちによると、高等な推論は演算能力がほとんど必要ないのに対し、低レベルな感覚運動機能は膨大な演算資源が必要とのこと。 35年間にわたる人工知能研究が残した重要な教訓は、“(人間が)困難な問題は簡単、簡単な問題は困難”というものです。すなわち、これから人工知能ロボットが進化したとして、アナリスト、エンジニア、会計士、医師、運転者などの管理職や専門知識が必要な職業は、機械に置き換えられる可能性が大きい。現在の技術をもってすれば、彼らの仕事はコンピュータやソフトウェアに置き換えることは難しくないからです。しかし配管工、庭師、案内員、シェフ、メイド、看護師などの職種は、今後数十年間は職場を守ることができると思います」

 なお、マカフィー氏らが書いた「ザ・セカンド・マシン・エイジ」には、機械化や自動化が起こしてきた、またこれから起こすであろう社会の変化が詳細に綴られている。例えば、米大企業の業績が好調なのに、格差が広がっている現実などを分析した項目は、現在の日本の現状と照らしても非常に説得力がある。

 これから先、機械化が加速する現代社会において、重要な文化人のひとりになることはまず間違いないはずだ。

photo by TED