進む医療現場への導入...ソーシャルロボットが痛みを和らげる

ロボティア編集部2016年8月20日(土曜日)

 医療分野では、患者の不安を和らげるために、ソーシャルロボット(対話型ロボット)の導入が進んでいる。フロリダ州タマラクのボロワード・ヘルス小児病院では、「MEDi(NAO)」という名前のロボットが患者に付き添う。同病院は子どもに優しいロボットを活用する、全米8施設のうちのひとつ。病院の処置にともなう不安や恐怖に打ち勝てるよう、ロボットが子どもを精神的に支援している。

 MEDiは、子どもたちを安心させるという意味で、高い能力を発揮する。青と白のデザインで、身長60cm、体重は6.8kgとなる。MEDi という名前は「Medicine and Engineering Design Intelligence」を略したもの。一見、おもちゃのようにも見えるが、その性能はスマートなロボットだ。

 同病院小児科コーディネーターのパトリシア・ローキング(Patricia Rowe-King)医師によると、MEDiは子どもたちの仲間であると同時に、痛みについて指導する先生でもあるという。採血時やギプスを外すときには、子どもたちに「次は何をすべきか」教えることができるという。病院では、2歳から14歳までのがん患者を癒やすために活躍中だ。小児病院向けにプログラムされており、痛みやストレスを深呼吸のテクニックで抑える方法も教える。また、血液検査や包帯交換、カテーテル抜去、アクセスポート埋め込み、予防接種などのときに子どもたちを支援する。MEDiはまた、英語とスペイン語を話せるバイリンガルでもある。

 MEDiの何よりの強みは、子どもの患者をどうやって元気づけられるか知っているという点にある。2月に腎臓がんと診断されたトミー・ボルガ君(4歳)とMEDiは、数週間で“親友”になった。トミー君が採血されるとき、MEDiはトミー君に寄り添い、次はどんなことをされるのか話しかける。針を突き刺される直前、トミー君の気をそらすために「目に何か入ったから取ってほしい」と頼んだかと思えば、「僕の血、何色か分かんないだろうな。足の指の色と同じ(ブルー)なんだよ」とジョークを飛ばしたりする。

 検査が終わると、MEDiは子どもたちに向かい、歌い、踊り、話を聞かせ、ゲームをする。トミー君を受け持つ保育士のカセー・カストロ(Kasey Castro)さんは「病院は怖いところです」と前置きしながら、次のように話す。

「私たちは子どもたちの気を紛らわせ、処置や検査を理解できるようにするためMEDiを利用しています。MEDiは処置や検査をより楽しく、脅威をより少なくさせます」

ソーシャルロボット_MEDi2
photo by youtube

 MEDiは顔を識別するソフトウェアも搭載。子どもたち一人一人の名前を呼んで、挨拶できるようプログラムされている。トミー君の母親ベスアン・ボグラー(Beth-Ann Boegler)さんは、トミー君にとって、この数カ月は穏やかな日々ではなかったと打ち明けている。トミー君は100日ほど入院し、2回の手術、7回の放射線治療、23回の化学療法を受けた。今後まだ2回の治療が残っている。それでもトミー君は、今はロボットの友達がいるから、そんなに怖くないと思っているそうだ。

「病院にいる恐怖をMEDiが取り去ってくれました(中略)2回の手術に、放射線治療…。全部すごく怖かった。しばらくは暗い日々でした。子どもが退院できるなんて思えなかった。でも、今とても調子がいいんです」(トミー君の母親)

 トミー君の主治医ヘクター・ロドリゲズ-コーテス(Hector Rodriguez-Cortes)氏は、ロボットが患者を助けると、スタッフも仕事がやりやすくなるので、結果的にロボットはスタッフも助けていると指摘する。

「おもちゃのように見えるがMEDiが、患者の状態をより落ち着かせる。そのため看護師たちは処置を予定通り進めることができます」(ヘクター医師)

 子どもにとって大人気のMEDiは、医師にとっても重宝すべき存在のようだ。対話型ロボットは、自閉症患者や犯罪を犯した受刑者の治療・リハビリにも活用できると言われている。今後、医療をはじめとしたさまざまな現場で活躍することが期待される。