「ロボット産業を日本から取り戻せ」...米業界重鎮がトランプ政権に進言

ロボティア編集部2017年1月28日(土曜日)

 アメリカの先端自動化協会(Association for Advancing Automation、以下A3)」のジェフ・バーンスタイン(Jeff Burnstein)会長は、ドナルド・トランプ新政権が進めるべきロボット分野および自動化の主要な課題を提示した。

 バーンスタイン会長は、トランプ新政権が雇用、技術革新、起業家精神など3つの観点から、ロボット分野および自動化分野の未来を設計し、産業を革新すべきだと強調している。

 バーンスタイン会長はまず、自動化された未来の仕事について言及した。トランプ大統領は、これまで数十年間にわたり海外に流出した米国企業の工場を本土に呼び込む「リショアリング(Reshoring)」政策を推進している。が、バースタイン会長は過去と同じ仕事が戻ってくる可能性は低いと示唆した。現在、米国を含む全世界的では、反復的な、もしくは危険な作業を代替することがロボットを導入する自動化の最も優先的な目標となっている。

 中国は賃金上昇と高齢化に対応するために、製造業分野の自動化を積極的に推進しており、政府も大規模な支援政策を行っている。これにより、中国では過去数年間、世界で最も急速にロボットが普及・拡大している。バースタイン会長は、米国企業がグローバル市場で競争するためには、自動化技術を積極的に活用しなければならない。また自動化は米国メーカーの利益を獲得し、仕事をつくりだす最も重要なファクターでありつつも、自動化システムの導入が増加することで、雇用の不均衡が発生している点については看過できないと示唆した。

 国際ロボット連盟(IFR)の資料によれば、2010年から2015年まで、米国では13万5000台ほどの産業用ロボットが設置された。同期間、自動車産業界の従業員数は23万人まで増加した。しかし、仕事の性質が変化している。 バーンスタイン会長は、米国で将来の仕事を担当できる労働者を育てなければならない、としている。つまり自動化のための機器を設置、プログラミングし、作動および保守できる人材が必要であるということだ。また、パートナーロボット、コ・ロボットなどの自動化を促すロボットとともに働くことができる、訓練された人材も育てる必要があるとする。

 なお、コンサルティング企業・デロイトによると、2025年までに製造業で350万人が補充されなければならないが、200万人分の雇用が“空席”として残る可能性があるとしている。米国では近年、STEM教育に対する関心が高まっているが、人材育成のための実習プログラム(apprenticeship programs)が、2003年から2013年にかけて40%減少している。これは産業競争力を誇るドイツとは対照的だ。

 ドイツの場合、高校卒業者の約半数が大学進学ではなく、徒弟教育を選択する。米国の若者たちの実習教育の割合は5%に満たない。 バーンスタイン会長は、トランプ政権が徒弟教育への投資、効果的なトレーニングコースなどを拡充し、技術格差(skills gap)の問題を解消しなければならないとする。

 次いで、自動化におけるリーダーシップについても言及があった。1950年代には、“ロボットの父”と呼ばれるジョセフ・エンゲルバーガー(Joseph Engelberger)氏が、産業用ロボットの中心的な技術を開発・普及させた。しかし、米国ではこの技術を採用できず、エンゲルバーガー氏は日本企業に技術をライセンスした。

 結果、日本企業が自動化に関する市場を掌握する形になった。バーンスタイン会長は、トランプ政権がロボット化および自動化分野における、リーダーシップを取り戻す努力をすべきだと強調している。なおIFRによれば、2016年から2019年まで、全世界的に140万台の産業用ロボットが普及する見通しだ。

 バーンスタイン会長はまた、起業家精神についても言及した。起業家精神は米国の経済成長を主導してきた。中小企業庁(Small Business Administration)によると、2009年から2015年の第2四半期までの間に、400万人分の雇用が創出された。なかでも、中小企業が全雇用の67.5%を創出しているという。自動化技術は、予算と専門人材が不足する中小企業に価値を与える。それら機器は、安全かつ管理・メンテナンスが容易で、投資回収率も高い。

 米国は、イノベーションと起業家精神面で世界的な名声を誇る。トランプ政権は、米国の経営者たちの起業家精神をサポートしつつ、革新的な技術を採用して、自動化分野で世界市場をリードできるよう支援すべき、というのがバーンスタイン会長の主張だ。

 なおA3は米ロボット産業協会(Robotic Industries Association、以下RIA)、先端ビジョン+イメージング協会(Advancing Vision + Imaging、以下AIA)、運動制御&モーター協会(Motion Control&Motor Association、以下MCMA)を傘下に置く。3団体は、自動化機器メーカー、部品サプライヤー、システムインテグレータ、研究グループ、コンサルティング会社など、米企業1000社が所属している。

 それらの連合団体であるA3の司令塔が、バーンスタイン会長だ。彼は32年間にわたり、ロボット、マシンビジョン、運動制御分野に従事。ロボットと自動化について、トランプ新大統領に助言する立場にいる。

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