トランプ「アメリカファースト」の真の敵はロボットとAI

ロボット_自動化_産業空洞化
photo by Annette Bernhardt

 アメリカファースト(米国第一主義)を掲げたドナルド・トランプ新大統領の圧力に対し、世界自動車メーカー大手などが米国に工場をつくると次々と宣言している。また、アップルの委託生産メーカーであるフォックスコンも、米国に工場を設立すると発表した。今後、大手製造業の“米国行き”はますます加速すると見込まれている。

 ただ、米国に製造工場が設立されたとしても、アメリカ人の雇用が大幅に増えるという保証はない。というのも、世界に広がる第4次産業革命の影響で、工場ではロボットが仕事を代替する傾向が強まっているからだ。

 最近、米メディアは製造業などの産業空洞化や、ロボットの導入など自動化が、労働市場にどのような変化を促すか分析しはじめている。発展途上国で進む「早期産業空洞化(premature deindustrialization)」現象も注目を受けはじめている。早期産業空洞化は、ハーバード大学のダニー・ロドリク(Dani Rodrik)教授が提唱した概念。発展途上国は、工業化に積極的に乗り出しているが、国家経済で製造業が占める割合が所定の水準にとどまったり、むしろ低くなる現象をいう。

 これまで、工業化は労働者の生活の質を高める役割を果たした。第二次世界大戦後、工業化により産業の生産性が高まり、米国の中産階級は賃金が上昇した。ただし、当時はロボットによる自動化は産業全体として拡散せず、自動車産業などごく一部の産業に限定された。ロボットが担う労働も、単純な作業にとどまった。そのため、自動化で仕事がなくなるということはなかった。むしろ労働者は、生産性の上昇効果の恩恵を得ることができた。

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。