ロボット産業が急成長を遂げる中国・重慶市...GDP増加率10.6%でトップ

ロボティア編集部2017年6月30日(金曜日)

 中国・重慶市において、ロボット市場が急成長を遂げている。先日、韓国貿易投資振興公社(KOTRA)の重慶貿易館が「中国重慶ロボット産業市場動向」を発表したが、同報告書によると、重慶市のロボットおよびスマート装備産業生産額は、2014年には100億元(約1626億円)、2015年には150億元(約2439億円)だったのに対し、2020年には1千億元(約1兆6260億円)規模にまで達する見込だとされた。

 重慶市は自動車やバイク、ノートパソコンの主要生産地。生産規模は国内最大レベルを誇っている。自動車と電子機器において産業用ロボットの活用がそれぞれ40%、23%と多い状況にあり、重慶市はロボット産業の潜在力が非常に大きな市場であることがうかがえる。同報告書によると、2020年までに電子機器や自動車、スマート設備などの産業総労働者は400万人を超える見通し。1万人あたり、100台のロボットを使用すると仮定し需要量を予想してみると、4万台必要になるということになる。

 2016年上半期の国内総生産(GDP)データを見ると、全国のGDP増加率が6.7%であったことに対して、重慶市は10.6%でトップ。今後も引き続き好調な発展ぶりを維持するとみられている。中でも特に注目すべきは、重慶市内の「両江新区」だ。同区は上海の浦東新区、天津の浜海新区に次いで3番目に開発された地区として内陸部の経済成長を牽引している。

 両江新区はロボット産業の発展に向けて、いくつか目標を掲げている。まず、ロボット開発、および製造におけるグローバル企業を集め、産業クラスター(新事業が次々生み出されるような事業環境を整備することにより、競争優位を持つ産業が核となり広域的な産業集積が進む状態)を形成すること。二つ目は国家ロボット検測・評定センターの建設だ。

 三つ目に挙げられるのは、自動生産ラインや製造管理システムなどの製造エコシステムをより強化するための「スマート工場」の建設。中国政府は製造業のスマート化に向けて、生産品質管理と技術開発に重点を置き、製造総合力で世界トップクラスの仲間入りを目指している。

 四つ目は中国ロボットやスマート製造産業の育成および貿易センターの設置。五つ目は2020年に産業用ロボット生産を年間1万台、また、サービスロボットや各分野においてニーズを満たす特殊用途ロボット(例えば医療手術ロボットや自動でペイントする塗装ロボットなど)を5万台生産すること。最後にロボットやスマート製造機の年間生産額300億元(約4878億円)を達成し、中国トップのスマート製造基地にすることだ。

 また、両江新区にはひとつの製造区と5つの「プラットフォーム」によって構築された産業団地がある。製造区では16個のプロジェクトが進行されており、30億元(約487億円)が投資されている。年間生産額としては、70億元(約1138億円)を見込んでいる。

 一方で、ロボット標準検測プラットフォーム、ロボットレンタル融資資源プラットフォーム、ロボット人材育成プラットフォーム、ロボット振興プラットフォーム、ロボットの展示体験プラットフォームからなる5つのプラットフォームには、明確な将来ビジョンが設定されている。

 まず、ロボット標準検測プラットフォームは、中国政府が2015年5月に打ち出した「中国製造2025」に基づいて建設された、国家主導の3大ロボット検測センターのひとつ。ロボット国際標準の研究を通じてロボットの標準化を見直し、ロボット検測技術の研究や制定を行う役割を担う。また、ロボット部品の品質や安全性等の担保のため品質に関する各種法令や規制を研究して定める。

 二つ目のロボットレンタル融資資源プラットフォームは、ロボットレンタルモデルを通じたスマートロボットの使用拡大を目標として設立された。つまり、スマートロボットを購入して使用する企業に融資と補助金を提供するというもの。このプラットフォームによって、ロボットをレンタルする企業は比較的低コストで生産ラインの自動化を推進することができる。企業側は税金が控除される税制上の優遇措置も受けられる。

 三つ目のロボット人材育成プラットフォームでは、その名の通り中国のイノベーション人材の発掘・育成を支援する。中国最高レベルの科学技術機関および自然科学・ハイテク総合研究センターである中国科学院が管轄し、国内外の大学や研究機関、企業と連携し、科学とキーテクノロジーのイノベーションを支援するために設立された。ロボットの技術開発や応用を専門的に扱う一方、システム統合、アフターサービスまで公共サービスの提供が可能な人材育成を目標としている。

 四つ目のロボット振興プラットフォームでは、政府、企業、科学研究、資本、産業を一つにする新たなモデルを通じて、最先端ロボット企業を育成することを目指している。このプロジェクトでは、溶接や運送、組立等の工業用ロボットとセキュリティー、建築、医療など専門ロボットを主に扱う予定で、およそ3億元(約48億円)の資金が投資される見込みとなっている。

 最後に、ロボットの展示体験プラットフォームでは、国内有数のロボットメーカー4社とシステム統合会社20社、サービスロボット開発製造会社10社を入居させ技術開発や展開中のサービス、プロジェクトなどをわかりやすく展示する。今年末までに新たに40社の企業を誘致し、年内に推進プロジェクトの成功率を10~20%向上させることを目標として掲げている。

 このように、重慶市は工業用ロボットの潜在力が非常に高い都市であることが見受けられる。それだけでなく、サービスロボットや特殊ロボット分野も現在急速に成長中だ。

 重慶市政府は、Kawasaki(川崎機器人(天津)有限公司)やABB(上海ABB工程有限公司)、KUKA(庫卡機器人(上海)有限公司)、Fanuc(上海発那科機器人有限公司)など、大手産業用ロボットメーカーとMOUを締結したり、有名大学と連携させ、地域内における「囲い込み戦略」を展開しているとみられる。これらの連携は、新たな技術開発や有名ブランドとしての価値を重慶市にもたらすと期待されている。今後産業用ロボット最大の買い手となる中国市場の動きに、ますます注目が集まりそうだ。

■関連記事
-ロボット大国目指す中国…サービスロボット需要は莫大
-中国Baidu(百度)が中国農業銀行とフィンテック業務で提携…農村部の金融サービス強化へ
-Eコマースの世界最大市場の中国でロボット配送が本格スタート
-中国勢が攻勢…CESアジア2017「気になるロボット5選」
-【人工知能】将来アメリカが我々の技術を盗む時代になる…中国メディア

photo by Wikimedia Commons