スイスUBS銀行「第4次産業革命は格差を広げる」

ロボティア編集部2016年1月22日(金曜日)

 スイス最大の銀行UBS(ユービーエス)は、世界経済フォーラム年次総会(通称:WEFダボスフォーラム)開幕を控えた1月19日に、ロボットや人工知能(AI)の発展に伴う「第4次産業革命」により、世界的に不平等や格差が広がると報告した。また、第4次産業革命に関するレポート「The global, regional, and investment implications of the Fourth Industrial Revolution」を公開。英ガーディアンなど複数の海外メディアが報じた。

 報告では人工知能とロボット技術の開発を蒸気機関、電気、電子工学の発展に続く「第4次産業革命」と表現し、洗練されたロボットの登場で、少なくない労働者が職を失うだろうと警告。低賃金な単純労働ほどその影響は大きく、賃金が減少したり、仕事を失う可能性が大きいとした。

 特にロボット技術の発達に最も大きな打撃を受ける職種として、事務職などいわゆる「ミドルクラスの熟練職」を挙げた。工場の組立ラインではすでにロボットが労働者と代替されはじめているが、今後はそれとは異なり、まだロボットと競争していない職種も直撃を受けはじめるという分析だ。

 代表的な例としては、顧客サービス応対や保険金請求処理などの職種が挙げられており、事務員が行ってきたそのような作業が、今後は人工知能によって処理される可能性が大きいと報告書は指摘している。一方で、高賃金の高度な技術職など、適応性に優れた人材は大きな影響を受けず、むしろアドバンテージを持っていると報告書は分析している。

 またこのような傾向は全世界的なものであるした上で、先進国と発展途上国間の格差をさらに推し広げるだろうとも予想している。スイスやシンガポール、英国、オランダなどの先進国は、4次産業革命がもたらす変化に適応する準備ができているとする一方、ラテンアメリカの諸国家やインドなどの新興国は、人工知能とロボット技術が普遍化すればするほど、相対的に賃金コスト面における競争力を失うと予想している。

ダボス会議
photo by 首相官邸

 なおレポートでは、第4次産業革命に対する適応能力の国別ランキングを発表。労働市場の柔軟性、技術水準、教育適応力、インフラ、法的安定性の5項目が分析された。

 結果、総合1位から順に、スイス、シンガポール、オランダ、フィンランド、米国、英国、香港、ノルウェイ、デンマーク、ニュージーランド、スウェーデン、日本(12位)、ドイツ、アイルランド、カナダ、台湾、オーストラリアなどとなった。

 SUBは経済構造が柔軟でビジネス上の非効率や不要な規制がない国であればあるほど、4次産業革命でより大きな利益を得るだろうと予想した。

レポートは最終的に、個人でも国家でも、所得・技術水準など「富のはしご」の上位にいるほど、ロボット革命の恩恵を受けることができるとし、これに伴う二極化や格差拡大を防ぐため、政策的介入が必要であると強調している。

 UBSアクセル・ウェーバー(Axel Weber)会長は「(ロボット技術の発達に伴う)不平等の深化は先進国と発展途上国、新興国の間ではもちろん、私たちの社会の中でも起きている」とし「これを防ぐには政策立案者が乗り出さなければならない」とコメントを残した。