カナダ・モントリオールで仏語AI学習機関「EAIS」開校...AI医療プログラムの拠点へ

大澤法子2018年11月29日(木曜日)
Photo by Nicolae Rosu

モントリオール大学病院センターの医師らから成る研究グループが世界初の試みとして、AIに関する学習機会を提供するフランス語学校「EAIS」を開校。地元紙が14日報じた。社会的、法律的および倫理的側面から医療AI研究に資することを目的に設立された機関であり、目指すは医療AI分野の世界的リーダーだ。

モントリオール大学病院センターではすでに、80件ほどのAI関連プロジェクトを抱えている。分野においては、眼科学、皮膚科学、放射線科学、内分泌学、放射線腫瘍学…と多種多様だ。また、同大学は現在、外科手術のうち特定の作業に対し、AI搭載のロボットを試験的に運用中である。

AIは確実に医療に革命をもたらし始めている。脳容量からアルツハイマー病の可能性を探るばかりか、心臓血管領域では心臓の機能具合を診たり、肺結節を発見したり、さらにはがんの発症を予測したりといった場面での活用も見込まれている。それに伴い、今後医用画像の役割の再定義が検討されるのは確実であろう。

AIは必ずしも万能なツールではない。「万が一エラーを出してしまった場合、人間である医師がそのエラーを察知しなければならない。つまり、人間はAIがしていることを常時把握する必要がある」と同大学の放射線・核医学部門のヴィンセット・オリヴァ医師は地元紙の取材に対しコメントした。

モントリオール大学の「EAIS」にとっての最終目標は、アルゴリズムをよりスマートにすることではない。「テクノロジーは未来のヘルスケアをどう形作るか?」に主眼を置いており、米国のシリコンバレーに拠点を置くシンギュラリティ大学が提供する医療AIプログラムに酷似したものとなっている。

カナダのモントリオールといえば近年、AIの研究開発拠点をモントリオールに移す企業が増えている。ソーシャルメディア大手・フェイスブックはそのひとつであり、2017年9月、マギル大学の教授に呼びかけ、モントリオールにAI研究所を開設している。

モントリオールのあるケベック州では、フランス語が公用語のひとつとなっており、フランス語を母語とする移民が多く居住している。「EAIS」はフランス語圏で初のAIの包括的研究機関としても注目を集めている。

大澤法子

記者:大澤法子


翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。人間同士のミスコミュニケーションに対するソリューションの担い手として、ロボット・VRなどがどのような役割を果たし得るかを中心に追及。

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