「ペプシコは、第4四半期の北米地域のお菓子と飲み物の売り上げが、価格政策に支えられ上昇したと明らかにした。フリトレーチップスとトロピカーナジュースメーカー(ペプシコ)はこれまで、消費者により多くの収益をもたらすため製品の構成を改変し、価格を調整してきた。ここでは、消費者がより高い価格を支払う価値があると感じることができるようガラス瓶に入れた、『ゲータレード』と『マウンテンデュー』の新製品発売計画などが含まれた」
この記事はAP通信が11日に発表した、飲料メーカー「ペプシコ」の実績に関する記事だ。ただ、この記事を書いたのは人間ではない。記者となったのは、オートメーテッドインサイト(AI)社が開発した「ワードスミス(Wordsmith)」という人工知能だ。
AP通信は2014年7月から、四半期ごとに発表される企業業績の記事作成に「ワードスミス」を使用している。いわゆる、「人工知能ジャーナリズム(ロボットジャーナリズム)」の実験を始めたのだ。
AP通信がワードスミスを導入して以来、これまでの四半期で平均300記事にとどまっていた企業業績の記事が4300記事にまで増えたという。ロボットは人間より14倍多くの記事を書くことに成功したということになる。記事一件の作成に要する時間はわずか1〜2秒。作成可能な記事量に制限もない。
AP通信副社長ルー・フェラーラ(Lou Ferrara)氏は、「ワードスミスのおかげで、ほぼすべての企業の業績を扱うことができるようになり、私たちのニュースの提供を受ける各地域の報道機関の満足度が高まった(中略)現在はスポーツの記事作成にもワードスミスを導入している」と話している。ちなみに、米経済メディア・フォーブス(Forbes)も人工知能を使用した記事を作成している。フォーブス社が採用する人工知能ソフトウェアはナラティブ・サイエンス(Narrative Science)社製である。
AP通信がワードスミスを導入したことにより、これを開発したオートメーテッドインサイト社の名は全世界に知られることになった。オートメーテッドインサイト社の前身は、2007年に設立されたスポーツ中継ソフトウェア制作会社「スタットシート(Statsheet)」だ。
スタットシートは、金融、不動産などスポーツ事業以外に領域を拡大するために、2011年に社名をオートメーテッドインサイトに変更。昨年2月に、投資会社「ビスタエクイティパートナーズ(VistaEquityPartners)」に買収された。買収前には、サムスンとAP通信、AOL共同創業者スティーブ・ケース(Steve Case)氏に、550万ドル(約6億2000万円)の投資を受けた。
韓国日報の取材を受けたオートメーテッドインサイト社の広報担当者ジェームス・コテッキ(James Kotecki)氏は、ワードスミスについて「構造化された数値を文字に変換するソフトウェア」と紹介し、「メディア業界では“ロボット記者”と呼ばれている」と話している。
現在のワードスミスを使用している主要企業としては、AP通信、ヤフー、保険会社・オールステート保険(Allstate Insurance)、オンライン中古車販売エドモンズドットコム(Edmunds.com)、コムキャスト(Comcast)、などがある。オールステートの場合、従業員に販売実績などを数値化して通知する代わりに、ワードスミスを利用してメールでアドバイスする用途に使用している。一方、エドモンズドットコムは、中古車の相場、性能、年式、燃費などをユーザーに紹介するために活用している。
人工知能が発展すれば人々の仕事が奪われるという懸念が多い。ロボット記者を率先した採用したAP通信にも、そのような心配がなかったわけではないという。ただ、コテッキ氏は「AP通信は、コンピュータが得意なことはコンピュータが処理するように任せ、所属する記者は意味や背景を伝える仕事に集中する」とし「人工知能がむしろ、記者がジャーナリズムの本質に近い仕事ができるよう支援している」と言及した。
また、オートメーテッドインサイト社は、人工知能が発展しても人間にのみ可能な領域が存在すると指摘している。コテッキ氏は「コンピュータは、誰が、いつ、どこで、何をしたか伝えることができるが、“なぜそうしたか”は分析できない(中略)“なぜ”、また“どのように”を説明することは、自動化されたとしても容易ではないだろう」と予想している。
一方、コテッキ氏は「今、もし仕事を探しているならば、20〜30年後に自動化される可能性があるかないかをまず考えてみた方がよい」とアドバイスしている。自動走行車の登場で運転手という職業が消える可能性が高いが、同様に技術の発展によって失われる可能性が高い職業は選択しない方がよいという意味になりそうだ。コテッキ氏は「明らかな事実として、時間が経過するにつれ、機械が人を代替する分野がさらに増えるだろう(中略)私たちがすべきことは、人間がコンピュータより得意なことを明確に区分して鍛錬すること」と強調した。
上に挙げた例以外にも、例えば、ロボット記者と人間の記者の最大の違いのひとつに、“話を聞く”という行為がある。当然だが、聞かれてもいないのに、ロボットに“本音”や“真実”を語る取材対象者は、それほど多くないのではないだろうか。確かに、音声認識センサーなどが発展すれば、ロボットが話を聞くこと自体はできるようになるかもしれない。ただ、そんなロボットに対して人間が何を語るかはまた別の問題となる。
コミュニケーション、動機付け、思索、人間の気持ちを読むこと、そして情報を集積して新たな人間関係を築くなどの仕事は、まだしばらく人間の記者の領域になるのではないだろうか。
(ロボティア編集部)