刻一刻と迫る、人工知能ロボットを犯罪捜査・更生に導入する未来

ロボティア編集部2016年4月6日(水曜日)

 米シリコンバレーのベンチャー企業「ナイトスコープ(knightscope)」は、2013年にパトロールロボット「K5」を開発した。同ロボットの身長は1.5m、重量136㎏。最大時速4.8㎞でパトロールすることができ、360度見渡せる回転型カメラで、1分間の間に車両ナンバープレート300個を読みとることが可能だという。赤外線センサーが搭載された顔認識機能は、夜間でも判別が可能。カメラで撮影した情報は、リアルタイムで中央センターに転送される。一度充電すれば24時間稼働可能で、電力が不足すると自ら充電ステーションに帰還する。マイクロソフト社は、2014年にK5を 4台を導入。企業内の警備業務に活用している。

 世界各国では現在、K5のようなパトロール業務だけでなく、捜査・尋問など司法における全分野にわたって知能型ロボット(インテリジェントロボット)を活用することが議論されている。例えば、韓国・刑事政策研究院は、「知能型ロボット技術と刑事政策」という資料を発表している。その中で言及されているのは、以下のような内容だ。

 まず、犯罪自体を抑止するという段階では、無人車と無人航空機の活躍が期待される。特にドローンの場合、交通渋滞で自由かつ迅速に出動なため活用度が高い。そのような、パトロールロボットの投入が本格化すれば、既存の人材を適材適所に配置、業務の効率性向上にも資するものと見られている。

 犯罪捜査の段階では、証拠収集や現行犯追跡など、人工知能を搭載したインテリジェントロボットが現場を歩き回ることが想定される。従来は、望遠鏡や肉眼、監視カメラなどで容疑者や現場を監視してきたが、今後は無人偵察機が犯人発見や証拠確保の先頭に立つという訳だ。加えて、犯人の犯罪後の行動や逃走方向を計測する「捜査支援ロボット」、被疑者尋問の過程で矛盾や非論理的な部分だけを指摘する「審問補助ロボット」の登場も近いという分析だ。

 次に刑務所では、一般的な受刑者の管理だけでなく、外国語同時通訳機能を備えたロボットが登場。外国人の更生及び教化にかなりの能力を発揮するとの可能性を示唆した。その後、保護観察の段階では人工知能とロボット技術がさらなる威力を発揮する。現在、韓国・法務部では、着用者の脈拍、皮膚温度、犯罪手口と移動パターンをビッグデータ化し、犯罪の兆候を把握、事前に対応するための「知能型電子足輪」の開発を進めている。この足輪は2017年末には導入が可能だそうだ。

ニューヨーク犯罪捜査_知能型ロボット
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 ただ、犯罪捜査や抑止に人工知能が活用されるためには課題も多い。韓国・刑事政策研究院ユン・ジヨン研究委員は「知能型ロボットを活用する過程で最も多く発生する可能性のある問題は、不特定多数の人々のプライバシーが侵害されるというもの。(中略)情報収集のための法的根拠を用意し、既に収集された情報を事後的に扱う、もしくは管理するという領域でも情報保護原則を徹底的に確立する必要がある」と韓国メディアの取材に答えている。

 一方、米国ではインテリジェントロボットを活用し、犯罪多発地域や犯罪類型別犯罪者の特性など、犯罪に関連するビッグデータ分析を行っている。

 米ニューヨーク市は、2012年にマイクロソフト社と共同開発した「犯罪監視統合システム」を運用。ニューヨーク市内に設置された監視カメラ3000以上が撮影した映像をリアルタイムで分析し、犯罪車両を追跡している。またこのプログラムを使えば、パトロールカーが車両を発見した際に、車の所有者の過去の犯罪記録や車両の移動経路などを把握することができる。

 米国サンフランシスコでも過去8年間の間、犯罪が発生した地域とタイプを分析し、犯罪を事前に予測するシステムを導入してきた。犯罪が発生する可能性が大きい場所に警察官を配置することで、人材を効率的に運営することができる。このシステムを、6ヶ月間の試験運営した際の精度は71%に達したそうだ。

 知能型ロボットが人間の治安を守り、管理する時代はすでに始まっている。今後、その運用の幅がどこまで広がるのか。人間のプライバシー保護や法整備の問題とともに、見過ごせないイシューとなりそうだ。

(ロボティア編集部)