韓国金融監督院「人工知能で特殊詐欺犯を特定する」

ロボティア編集部2016年5月20日(金曜日)

 約476億8000万円――。

 これは警察庁が発表した、2015年のオレオレ詐欺など特殊詐欺の総被害額だ。一昨年、2014年の被害額より減少したとはいえ、いまだ多くの人が被害に遭い、大事なお金を奪われ続けている。

 実はアジアには日本以外にもオレオレ詐欺など電話による特殊詐欺に悩む国がある。隣国・韓国だ。その韓国では、特殊詐欺犯を逮捕するため、人工知能が採用され始めている。

 韓国・金融監督院と国立科学捜査院は5月19日、業務協約を締結した。両者は詐欺犯の声を抽出・フィルタリングするため、マシンラーニング(machine learning=機械学習)による声紋解析を行っている。

 昨年から、金融監督院は韓国国民が録音した詐欺犯の電話の声224データを、インターネット上で公開している。この録音・公開された音声には「あいつの声」という名称がつけられているのだが、単純に声が公開されるという状態にとどまっており、時間が経つにつれ犯罪の防止効果が落ちてきたそうだ。そこで、犯罪者を検挙するため画期的な方法を模索する必要性に迫られ、新しい方法を考案した。それが、人工知能で声紋を分析、オレオレ詐欺を複数回犯しているであろう詐欺師の声を一致させ、犯人を絞り込むというものだった。

 今回、金融監督院は寄せられたデータを解析し、複数の事件に関わっていると思われる詐欺犯を、9人にまで絞り込んだ。そして、「まさにこの声」という名称をつけ、「あいつの声」と同様にネット上で公開することにした。今回声が公開された、犯行4回分の声が一致した女性詐欺犯の場合、「釜山高等検察庁刑事1部キム・ナヨン捜査官」と警察を詐称。「個人情報流出と関連して尋ねたいことがある」と言って、被害者に近づいていたという。

オレオレ詐欺_電話
公開された詐欺犯の声のリスト photo by 韓国金融監督院

 韓国・金融監督院と国立科学捜査院は、今後も寄せられた詐欺師の声を分析し、データベースに蓄積。検挙に役立つよう、捜査参考資料として捜査機関に提供することにしている。ちなみに、金融監督院は「まさにこの声」に該当する詐欺師の声を通報し、検挙につながった場合、情報提供者に1000万ウォン(約100万円)の褒賞金を与えるともしている。

 人工知能を使った声紋解析が、電話を使った特殊詐欺犯の数を絞り込むこと、また逮捕に大きな威力を発揮するだろうか。他のシステムの連携・強化とともに、性能の向上が期待される。