マイクロソフトの相次ぐ買収劇、狙いはAIアシスタントの強化か

ロボティア編集部2016年6月17日(金曜日)

 マイクロソフトがチャットアプリ・ワンド(Wand)を開発したワンドラボ(Wand Labs)を買収したことが、6月16日に発表された。これは人工知能技術(AI)をベースにした、パーソナルアシスタントサービス(秘書サービス=スマートエージェント)を開発するための一手だと分析されている。

 マイクロソフトは先日、ビジネスに特化したSNS・リンクドイン(Linked-in)を同社過去最大規模となる2.8兆円で買収するとした。その後、わずか1週間足らず。新たな買収の報せとなった。

 なぜマイクロソフトは、SNSやチャットサービスなど、ソーシャルプラットフォームを持つ企業、また人口知能やAI botを開発する企業の買収に力を入れているのだろうか。

 これまでのネット検索では、検索エンジンに単語を打ち込むというのが一般的だった。ただ今後は、人工知能が搭載されたにパーソナルアシスタントと会話する形式が普及すると予想されている。ユーザーがスマートフォンに向かって質問し、音声を認識する人工知能がそれに答えるというものだ。結果、新時代におけるITサービスの収益源は、検索エンジンをベースにした広告収入から、パーソナルアシスタントを通じたものに移行する可能性がある。

 マイクロソフトはSNSやメッセンジャーなど、オンラインプラットフォーム市場で競合他社に遅れを取ってきた。海外主要メディアおよび専門家たちは、マイクロソフトが、買収したプラットフォームから提供される情報に基づき、パーソナル人工知能サービスの開発に注力しようとしているのではないかと分析している。

 もしそうだとすれば、その動きはグーグルやフェイスブック、Appleなど、大手IT企業が進もうとしている方向に酷似している。言い換えれば、膨大なユーザー情報を人工知能に学習させた後、カスタマイズされた検索、広告配信サービスを提供することで収益を最大化しようというものだ。

グーグルホーム
photo by Google Home

 例えば、検索エンジンから提供される膨大なデータを収集できる立場にいるグーグルは、これまでグーグルナウ(Google Now)やグーグルホーム(Google Home)といった、パーソナルアシスタントサービスをユーザーに提供してきた。今後、人工知能と音声認識技術の発達に応じて、さらに進化したサービスを提供する構えを見せており、ユーザーの会話に割り込んでレコメンド情報を提供するチャットアプリ「Allo」などを、今夏に公開予定だという。

 Appleは音声認識サービス・シリ(Siri)を展開。13日には年次開発者会議(WWDC)で、SiriをiOS用アプリと連動させるため、外部に公開すると発表している。iPhoneやiPadなどiOS用にアプリを開発している会社は今後、関連技術を搭載したサービスを提供することができるようになる。

 一方、SNSから膨大な情報を入手できるフェイスブックは、「M」というメッセンジャー型人工知能パーソナルアシスタントサービスを開発している。バズフィードニュース(Buzfeed News)は、「Mはグーグルに対抗するための、フェイスブックの新たな収益源になるだろう」と分析している。

 今回、マイクロソフトに買収されたワンドを開発するワンド・ラボ(Wand Labs)のデビッド・クー(David Ku)副社長は、ワンドのサービスを停止し、マイクロソフトの検索エンジン・ビーイング(Bing)の開発チームに参加すると伝えられている。そこで、インテリジェント・チャットボット(チャットでユーザーと会話するロボット)と、仮想アシスタントを開発する。マイクロソフトは2015年にすでに、音声認識秘書サービス・コルタナ(Cortana)を発表しているが、そちらとの連携も気になるところだ。