DARPA「生涯学習する人工知能」の開発プロジェクトを開始...4年間6500万ドル投資

ロボティア編集部2017年11月29日(水曜日)

米国防総省・国防高等研究計画局(以下、DARPA)が、学習を常に繰り返す人工知能「生涯学習機械(Lifelong Learning Machines:L2M)」の研究を進めている。

同プログラムを担当するディレクターHava T. Siegelmann氏は、「私たちは人間の柔軟性を兼ね備えた厳格なロボットを望む」と背景を説明。プロジェクトの金額的な規模は 6500万ドル相当で、期間は4年間とされている。すでにプロジェクトに関わる16個のグループが選出されており、12〜18か月スパンのプロジェクトに関しては、他のグループにもまだ提案の機会がひらかれている状況だ。

ニューラルネットワークは、さまざまなイメージなどデータセットを学習していく。そしてある程度の学習が済むと、外の世界に出て実際に業務を遂行するようになるが、そこで問題となるのは、人工知能が学習していない状況に直面した時だ。すでに稼働中の人工知能を再教育することは、非常に難しいとされている。

Siegelmann氏は、IEEEが主催する「リブーティング・コンピューティング・カンファレンスの席上で、「既存のシステムを再教育しようとすると、破局的な忘却(catastrophic forgetting)」現象を起こす」と指摘。つまり、新しい事柄を学ばせることで、AIシステムがすでに蓄積してきた知識を妨害してしまう懸念があると説明している。

人間も新しい局面に直面した際には一時的に混乱し、パフォーマンスの低下を経験することがあるが、行動しながら学習していく能力がある。予想外の局面に対して、適応する能力が機械に比べて早いのだ。今回のプロジェクトはそのように、環境に左右されず、もしくは瞬時に適応する力を持った「学習し続けるAI」を生み出そうというものと理解できよう。

現在、16の研究グループに与えられるミッション・助成金には、ふたつの項目がある。ひとつは、新たな課題と状況について継続的に学習・適応し、ミッションが何なのか理解できるシステムを開発すること(目標指向認識)。もうひとつは、生物学や物理科学から生涯学習の新しいメカニズムを抽出し、そのメカニズムを改良された人工知能アルゴリズムに移すことだ。

人工知能は限られたタスク(囲碁や画像診断など)をこなすことにはすでに優れたパフォーマンスを発揮して久しい。今後、ルールやフレームワークが変更された際に瞬時に適応するAIが生まれるのだろうか。プロジェクトの推移に注目したい。

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Photo by DARPA