演奏ロボットが作曲までこなす!?…ショパンやビートルズのシーケンスを学習

ロボティア編集部2017年6月23日(金曜日)

 ジョージア工科大学では、マリンバの演奏と作曲をこなすロボットが開発されている。同校のメイソン・ブレタン(Mason Bretan)氏はこれまで、4つのアームと8つのスティックで構成されたマリンバ演奏ロボット「シモン(Shimon)」を開発してきたが、最近になって音楽を作曲・演奏まで行えるよう機能を拡張した。ブレタン氏は、シモンに音楽を学ばせるため、5000個の音楽データセットおよび、最新の人工知能=ディープニューラルネットワーク(Deep neural network)を与えている。

 7年前からシモンを研究してきたブレタン氏だが、シモンについて「ディープニューラルネットワークを使用して、自律的に音楽を作曲する初めてのロボット」という点を強調している。

「学界やGoogleなどで研究されている音楽自動生成分野はソフトウェア的に実行されたシミュレーションであるのに対し、シモンは物理的な3次元空間でライブが可能なロボットシステムだ」(ブレタン氏)

 ロボットが音楽を理解して「アイデア」を実現する。これは、非常に困難な作業のように思える。シモンは新しい作品を生み出すため、まずひとつの小節のような小さな音楽ユニットを先に数値で表し、それらをシーケンス処理する方法を学習している。2つの独立したニューラルネットワークが操作に使用されるが、ひとつは簡潔な数値表現を提供するオートエンコーダとなる。もうひとつは、ユニットのシーケンスをモデル化する長・短期記憶ユニット(LSTM)ネットワークだ。

 ブレタン氏は「このシーケンスは、ショパンの協奏曲やビートルズの作品など、人間の作曲(過程)に由来するもの」と話す。また「LSTMは予測の任務を与えられるが、これは最初の8つの音楽ユニットが与えられれば、9回目を予測できるという意味である。仕組みが正常に実行されれば、LSTMに開始シードが提供され、そこから予測および生成作業を継続することができる。シモンが生成作業をするとき、音楽モデルベースの決定だけでなく、独自の物理的な情報を勘案する。(つまり)音楽的決定が特定の物理的な状況に合うように、最適化する役割を果たす」と説明している。

 今後シモンは音楽だけでなく、他分野でも応用可能だとブレタン氏。より一般的な次元で、人間の創造力と意思決定プロセスを支援することができるとする。

「(音楽生成のような)プロセスを複製することができれば、毎日、新しいシナリオや問題が発生する創造的な意思決定が不可欠な現実世界で、ロボットが大きな役割を果たすことになるだろう」(ブレタン氏)

 プログラムのみならず、“肉体”を持ったロボットが音楽を生成する――。人間の作曲家が持ちうる感覚を機械が完全に代替できるか、注目したい研究だ。

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