これからは、AIが美人を判断する時代がくるかもしれない。現在、人間ではなく、AIが審査する美人コンテストプロジェクトが進行中だという。
公募サイト「ビューティーAI(beauty.ai)」に自撮り写真を登録すると、人工知能がその美人度を評価。高度に発達した顔認識アルゴリズムが年齢、性別、人種、国籍などを考慮、評価し、その中から「世界最高の美人」を選ぶという。実際に応募すると「1月末に審査結果を届ける」という知らせが届くそうだ。
美人コンテストプロジェクトの審査を人工知能に任せる目的は何か。これは、人間の主観を避け、公平な評価をくだそうということではないらしい。同プロジェクトの本来の目的は、美しさや魅力という価値をロボットに教えること。
これまで、美しさや魅力という価値については人間が判断してきた。が、今回のプロジェクトではそれをAIに学習させようというのだ。写真を公募する理由は、美しさを判断するためのデータを大規模に収集するためだ。これから集まるであろう膨大な美しい顔のビックデータを、アルゴリズム開発に活かすとされている。
日本で人工知能の開発に携わる研究者のひとりはロボティアの取材に対して「人工知能の判断の基準はあくまで制作者が与えるもの」としている。では、この人工知能は何を持って美人という判断をくだすのか。黄金比率など、芸術やアートでいう美しいという基準を与えたり、その他に何か特別なものさしを用いるのだろうか?
アルゴリズムが選ぶ美人がどのような顔になるのか想像もつかないが、非常に興味深いプロジェクトだ。そもそも、“美”という価値は人間固有のもの考えられてきた。美に対する感覚は、人間の文化や生き方を方向づける。それを、コンピューターに教え込んで判断させることは、ユーモアにあふれていると同時に危険でもある。
「beauty.ai」が美人を判断するにあたり、最終的に「プロジェクトに携わる人々の趣向が反映された」となれば、笑い話で済むかもしれない。だが、そこに絶対的な基準が作られてしまえば、新たなヒエラルキーが生まれることにもつながりかねない。
美しさはあくまで相対的なもので、時代や地域、文化、社会環境によって変化するものだが、例えば、将来的に求人サイトと美人判断AIが連携すれば、いわゆる“美人”だけが企業に採用されるような未来が到来するかもしれない。
また、人々が幼い段階で、美人になる、ならないという判断をAIがくだすようになるかもしれないし、個人的に好きな顔だが「ビックデータやアルゴリズムがそう判断しているから」という理由で、人間側の美意識にも変化が生まれる可能性がある。いずれにせよ、美に対する判断をAIにゆだねることが人間にとってよいことなのかどうか、ゆっくりと吟味する必要がありそうだ。
なお同プロジェクトの成果は当面、健康および美容業界に対する市場のニーズを把握するために活用されるとされている。マイクロソフト、NVIDIAなど、大手ICT企業が後援することが決まっている。