「中国のAI潜在力は米国の半分」...英オックスフォード大が辛辣評価

ロボティア編集部2018年5月4日(金曜日)

英オックスフォード大学は今年3月、レポート「Deciphering Chinas AI-Dream」(中国のAIの夢を読み解く)を公開。米国と中国の「AI潜在指数」(以下、AIPI)を比較し、中国の人工知能(AI)の力量は、米国の半分であると評価した。中国各メディアが詳細を伝えた。

なおAIPIは、「ハードウェア」、「データ」、「アルゴリズム」「商業化」の4領域から、国家のAIに関する能力を総合的に測定した指標となる。レポートは、それら4領域のうち「データ」のみ中国が優位な状況にあり、残りの3つでは、米国に大きく劣っているとした。AIPI指数では、中国17点、米国33点と結論されている。

詳細を見ていこう。

レポートはまず、ハードウェアの面で半導体とIC(集積回路)の状況を調査した。半導体生産比率で見た際には、中国は世界市場シェアの4%を占めているが、米国のそれは50%に達しているという。またICのなかでも、高性能・高効率を誇るFPGA関連メーカーの投資状況を比較した際、米国は1.925億ドルの投資を受けており、世界投資額の42.4%を占めている。一方、中国は3440万ドルの投資に過ぎず、世界シェアの7.6%にとどまっているという。

このハードウェア面における状況の差は、中国のAI発展の「アキレス腱」となっており、中国は輸入などに頼ってAIのハードウェアの能力を高めていると評価された。

研究およびアルゴリズム面では、中国は昨年の段階で3.9万人のAI研究人材を保有していると分析されている。一方、米国は7.8万人以上の研究者を保有しており、比較するとこちらも半分の水準とされた。中国では最近、科学研究人材が急速に増えているが、研究発表成果の面では、米国とのギャップがあるとも分析された。また、中国では論文および特許数が増えているが、引用・活用数では米国や英国に大きく下回っている。レポートは、中国の研究開発が持つ影響力はまだまだ大きくないと結論づけている。

商業的なエコシステム、もしくはネットワーク面では中国は世界第2位を占めているが、総体的には米国の4分1に過ぎないと、レポートは評価している。世界のすべてのAI企業のうち、米国が42%、中国が23%を占めているが、AI分野への投資金額ベースでは、中国企業は約26億ドルに過ぎず、米国の172億ドルを大きく下回っている。次いで競争力のある新興AI企業という文脈でみた際には、米国39社、中国3社であった。2012年から昨年7月までに行われた、79件のAI分野のM&A事例では、66社が米企業に買収されており、対する中国企業は3社のみという結果も報告されている。

ただし、中国のデータ面での優位性は明らかだとしている。レポートは、中国のデータ面における絶対的優位の背景として、「プライバシー保護の不備」を挙げた。中国のIT大手企業が大量のデータを収集し、政府機関とデータを共有している状況があるというのがその指摘だ。またレポートは、「中国が持つデータの総量が非常に大きいが、中国の『データ保護主義』が、中国のインターネットエコシステムを閉鎖的にしている」とも指摘した。

FacebookとGoogleなど欧米の大手企業のサービスを排除している中国市場では、国内IT企業が恩恵を享受できる構造がある。仮にデータをAI発展に必要な希少資源とした際、中国政府は企業や研究機関などを通じてその資源を「独占」することができる。一方で、他国は、様々なプラットフォーム上で開放されたデータを共有しつつ、グローバルデータの「互恵関係」を形成しており、中国はそこから排除されていると説明している。

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