調査対象企業の5割が人工知能の導入に前向き..米ガートナー調査

ロボティア編集部2018年2月23日(金曜日)

世界の企業の多くが、人工知能(AI)を本格的に導入する動きを見せ始めている。IT調査企業・Gartnerは、レポート「CIOアジェンダ調査2018」を発表。調査に協力した企業のCIOのうち4%が「AIをすでに導入した」と答えており、「AIの導入計画を用意した」という回答者も46%も占めた。

Gartnerの副社長Whit Andrews氏は、リリース資料を通じて「AIに対する高い関心にもかかわらず、企業の実質的な技術導入率はまだ低い水準。だがCIOが購入、構築、アウトソーシングなどを通じてAIプログラムのテストを開始している。今後、成長の可能性が非常に高い」と説明している。

多くの企業が、AI技術を組織内に導入する上で、困難を経験しているという事実も明らかになった。

Andrews氏は「AIプロジェクトで、実績の向上など大きな成果は期待してはならない。手順の改善、顧客満足など、非定量的な成果を目指し、小規模のAIプロジェクトから開始することが望ましい」としている。また、「一部企業では、AIプロジェクトを開始する前に、まず財政目標値から設定する必要がある。しかもできるだけ低い目標値を設定すべき(中略)数千もしくは数万ドル水準の小さな目標を達成しつつ、プロジェクトによって達成しようとすることを理解した後に、より大きな利益を追求しなければならない」と助言している。

これまで技術の大々的な革新は、人員カット=コスト削減につながってきた。経営陣は、AIに人件費の削減という魅力的なタスクを望むが、従業員はこれに反発する可能性が高い。しかも、人件費の削減という側面のみ焦点を置くと、新技術を効果的に使用する機会を逃す可能性もある。Andrews氏は、「AIを通じて短期的に得ることができる最も革新的な効果は、従業員がAIを活用しつつ、より高い価値の生産活動をするように奨励することによって達成できる」と指摘。また「無限に複製可能なAIだけで構成された大規模なチームを編成して従業員の業務を代替させるより、従業員とAIが一緒に働くようにする方が生産的」「AIに基づいた意思決定支援が、(従業員の)日常業務をさらに改善・向上させることができるという点を強調する必要がある」とした。

ガートナー側は、多くの企業がAI導入のための準備が不足している点も指摘している。回答によれば、データサイエンスを内部的に吸収する技術が不足しており、その隙間を埋めるため、外部業者に依存している割合が高いことも明らかになった。調査に参加した企業の53%は、自社のデータマイニング、およびデータ活用能力を最も低い「限定(limited)」と自己評価している。

なおガートナーは、2022年まで85%のAIプロジェクトが、データ、アルゴリズム、もしくはそれらを管理するチームの偏向的な判断により、誤った結果に終わるとも見通している。

副社長のひとりJim Hare氏も、同資料のなかで「データはAIプロジェクトにおいて原油と同じ。企業はAIイニシアチブのために、大量のデータを保存・管理する準備をしなければならない。そのような技術を外部業者のみに依存することは、長期的な観点から好ましくない。したがって、初期のAIプロジェクトの過程で、内部の従業員が外部専門家の知識を習得するようにし、大規模なプロジェクトに着手する前に内部の力量を積まなければならない」と強調した。

photo by Gartner HP