モシェ・バルディ氏「AIが世界人口の50%を失業に追い込む」

ロボティア編集部2016年2月16日(火曜日)

 人工知能ロボットが今後30年以内に、世界人口の50%以上を失業状態に追い込むという悲観的な見通しが示された。

 英メディア「ザ・ガーディアン(The Guardian)」によれば、米ライス大学のコンピュータ科学者モシェ・バルディ(Moshe Vardi、上写真)教授は14日、ワシントンで開かれた米国科学振興協会(AAAS:the American Association for the Advancement of Science)の会議で、「機械がほぼすべての分野で、人より優れた能力を発揮する時代が近付いている」と言及。人間はこれから何をすべきか、真剣に考えなければならないと主張した。

 バルディ教授は、人工知能が全世界の失業率を50%水準まで高め、中間層の全滅と不平等のさらなく拡大をもたらすと警告。AI革命においては、人間の労働力を上回る強力なマシンが登場するということが問題なのではなく、人間の知恵と機械の知能が対決する局面に移るというのが問題だと指摘した。

 特異点問題を主張しているレイ・カーツワイル氏や、経済学者でジョン・メイナード・ケインズは、人工知能の発展や自動化により人間が労働から解放されるというユートピア的かつ楽観的な未来像を示したが、バルディ教授は、労働が人間の生活の中で非常に重要な部分を担っていると、それらの一方的な主張に懸念を示したという。

「米国経済はすでに、過去50年の間に技術の影響を大きく受けた(中略)米国の失業率が最近4.8%に低下したと主張されているが、その統計は米国経済が過去35年の間に危機状態にあったことを隠蔽している」(モシェ・バルディ教授)

ロボットが人間の仕事を奪う
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 バルディ教授は、米国では生産性が大幅に向上したが、自動化の影響で1980年に雇用水準がピークに達したのちに下落し続けており、家庭の平均賃金も下落傾向にあると指摘している。格差拡大の根本的な原因が、自動化にあるという分析である。

 そのような視点から、現在の科学者たちは技術が根本的に人間に役立っているのか、真剣に悩んでみる必要があるとも指摘。政治指導者たちが、この自動化と失業率の問題については無関心なことに批判的な意見を出した。

 一方、同イベントに参加したコーネル大学のバート・セルマン(Bart Selman)教授は「ビッグデータとディープランニング技術の発展により、コンピュータは人間のように見たり聞いたりする能力を備え始めた」とし、自律走行車、家庭用ロボット、サービスロボットなどが一般化され、人間とロボットの共生関係がはじまるだろうと指摘した。

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