Googleがロボット開発子会社ボストンダイナミクスを売却か

ロボティア編集部2016年3月18日(金曜日)

 Googleが2013年に買収したロボットメーカー・ボストンダイナミクス(Boston Dynamics)を売却する可能性が浮上した。17日、ブルームバーグなど海外メディアが報じた。

 報道によれば、Googleの持株会社であるアルファベット(alphabet)社経営陣は、ボストンダイナミクスでは、今後数年間のうちに販売、利益を生む製品を製造できないという結論を下し、これを売却することにした。ブルームバーグは、Googleの計画をよく知る取材関係者からそれらの事実を入手。そのうちのひとりは、今後ボストンダイナミクスを買収する可能性がある企業として、トヨタ自動車が設立した人工知能研究のための新会社Toyota Research Institute(TRI)や、また物流センター用ロボットを開発しているアマゾンドットコムなどを挙げている。

 なお報道について、Googleとトヨタ、アマゾンはコメントを拒否している。

 Googleは2013年12月にボストンダイナミクスを買収。100%子会社化した。Googleは当時、Android部門の責任者で、2013年3月から新事業発掘を引き受けることになったアンディ・ルービン(Andy Rubin)氏の主導のもと、ロボット分野の新興企業を多数買収。また、約300人のロボットエンジニアを入社させるなど、同分野に大規模に投資を行った。

 しかし、そのルービン氏が2014年10月に退社。Googleのロボティクス部門および計画「レプリカント(Replicant)」は、役員の頻繁な交代や、事業部間における協力の失敗などで困難を経験してきた。

 ブルームバーグは、ある消息筋の言葉を引用。レプリカントが難航していた大きな原因としてふたつを挙げた。まずひとつは、ボストンダイナミクスの役員が、米カリフォルニア州と日本・東京にあるGoogleの他のロボットエンジニアとの協力を好まなかった点。ふたつめは、近い将来にリリースされるはずだった製品を作ることに失敗した点だ。前者が真実であれば、精密なロボットを作る会社の役員が、“人間らしい感情”に振り回され協力関係を築けなかったということになる。いささか皮肉な話である。ボストンダイナミクスと仕事をしてきたGoogleのロボティクスディレクター、アーロン・エドシンガー(Aaron Edsinger)氏も、「壁にぶちあたっている」と言及したことがある。

 昨年11月にはGoogleの内部議事録が流出。ボストンダイナミクスと、Googleのその他ロボット関連事業部間の軋轢が、オンライン上で明らかになった。続く昨年12月には、「レサプリカント計画」が中断され、同スタッフたちは未来ビジネス発掘部門である「グーグルX」に編入されたとたとも報じられている。一方、ボストンダイナミクスについては“待機”状態にあるという。

ボストンダイナミクス_犬型ロボット
photo by pinterest.com

 ボストンダイナミクスはこれまで、障害物を避けながら高速で移動する犬型ロボットや、雪上を二本足で歩行するヒューマノイドロボット「アトラス(Atlas)」などを公開。世間の注目を集めてきた。後者については、ボックスを持ち上げて棚に置いたり、ホッケースティックで押しても倒れない様子が公開され、視聴者を驚かせた。Youtubeにアップされた同映像は、3週間で1000万人を超える視聴数を記録していた。

 一方、Googleディープマインドが開発した人工知能「アルファゴ(alphaGo)」は、囲碁世界王者イ・セドル9段に4勝1敗で勝ち越し、その性能を世界にアピールしたばかりだった。Googleが開発したソフトウェアである人工知能と、ボストンダイナミクスが開発したハードウェアが組み合わされることで、大きな相乗効果を生むのではないかという期待が高まるなかでの売却方針の決定となった。

 ヒューマノイド型ロボットなど、ロボティクス分野のリーディングメーカーであるボストンダイナミクスが売却対象として浮上したことで、同分野における「バブルが消えるのでは?」という観測も出ている。

photo by Boston Dynamics