豪大学が触覚を伝える新しい手術支援ロボットの開発を進める

ロボティア編集部2016年10月5日(水曜日)

 手術支援ロボット・ダビンチは、すでに2000年から臨床で緻密な手術に導入され始めており、多くの医師に手術を変革したと言わしめている。

 また患者の回復に要する時間は、ロボット支援手術と通常手術とで、ほとんど差がないという研究結果が最近示された。ロボット支援手術の優位性をあげる医師が多いなか、興味のある結果だ。

 ただ海外メディア・デジタルトレンドによれば、まだ解消できていない課題もあるという。それは、臓器を触った時に感じる硬さや手触り感、手術糸を引っ張る感覚といった触覚が感じられず、ロボットを操作をする際、医者は視覚情報のみに頼らざるをえないという点だ。触った感じが得られないので、正常な組織とがん組織を区別しにくいなどの問題がでてくる。

 オーストラリア・メルボルンにあるディーキン大学(Deakin University)では、新たな手術支援ロボット「HeroSurg」の開発が行われている。こちらのロボットは触覚を医者に伝え、より安全かつ精巧なロボットによる手術支援をめざす。

 同大学インテリジェント・システム革新研究所の所長Suren Krishnan教授は、手術における触覚の重要性を指摘する。

「ロボットを使わない通常の手術では、術者は自分の指で組織を触って組織の硬さ・柔らかさを感じ、正常な組織とがん組織を区別する。また、感染や炎症でもろくなった組織はより緻密な剥離・切除を要するが、臓器を触るなど触覚で感じとることでやりやすくなる」(Krishnan氏)

「HeroSurg」を開発するのは、ディーキン大学のエンジニアや医師、またハーバード大学のMoshen Dalvand氏だ。「HeroSurg」はわずかな振動を医者の手に送ることで、患者にかかった圧力を感じとれるセンサーを搭載。他にも、ロボットアームの周囲臓器へのぶつかりなどの事故を、自動的に回避する機能を備える。

 Krishnan氏によると、「HeroSurg」はまだ開発段階にあり、臨床での実用化は2年以上先になる見込み。ただ同氏は、ロボット支援手術の価値ある選択肢を他社より低価格で提供できると楽観的観測を示した。