深刻化する微細粒子状物質(PM2.5)の解決に、IBMの人工知能「ワトソン(watson)」が活用される方針だ。ワトソンは人間の言葉や文字を理解する人工知能プラットフォームで、多様な分野から情報を習得・分析し、自ら学習。サービスを受ける関連企業や個人に有益な情報を提供する。
10日、韓国のIT業界および環境部が明らかにしたところによると、韓国政府がワトソンを活用したPM2.5予報システムの導入を議論しているという。
IBM側はワトソンに膨大な気候情報を分析させ、PM2.5の予測精度を向上させる計画だ。クラウド型ビッグデータを活用し、汚染地域のエネルギー使用量を分析。衛星、IoT光学センサーなどを駆使し、汚染物質のデータやPM2.5予報情報などを算出する。また、汚染源を特定できるソリューションも提供される予定で、最終的にPM2.5の減少に寄与するものと期待されている。
ワトソンは、医療、金融、流通など様々な分野で使用されているが、特に気象情報の分析に強みを持つ。一例として、大量の気象情報を学習して大気の状況を予測。飛行機のパイロットに知らせることができる。また、台風の移動経路をより正確に把握し、被災地を具体的に特。救援チームに伝える役割も果たす。またワトソンが自ら学習する過程で、気象情報を上手く予測するためには「海底温度」が重要な情報であることもつきとめている。
IBMは毎年行う社会貢献プログラムの一環として、韓国国内のPM2.5の解決にワトソンを活用する案を環境省に提案したという。これに対して環境部の関係者は、「実務レベルで肯定的に検討している」と伝えた。
IBMはすでに、昨年から中国でワトソンを活用した、PM2.5ソリューションを稼動している。中国政府は、来年までPM2.5を25%減らすという目標を立てており、IBMとともにエネルギー使用量の監視、大気質の予測、再生可能エネルギーネットワークの構築などを進めている。
なお2017年からは、ワトソンの韓国語サービスが開始される予定である。IBMと手を組むのは、通信、エネルギー、石油精製業を主な事業ポートフォリオとする財閥グループSKの関連企業「SK C&C」だ。
5月4日、SK C&Cは、米ニューヨークでIBMと人工知能に関する事業協力契約を締結。ワトソンの韓国事業権を獲得したと9日に明らかにしている。今後はSK C&Cが、韓国でワトソンプラットフォームを拡大する役割を担うことになる。SK C&Cはまた、韓国IBMとワトソンのシステム構築、韓国内のマーケティングを共同で進める予定である。
両社は来年の韓国語サービス開始に向け、自然言語の意味解析、機械学習をベースにしたデータ分析など、関連する機能の韓国語バージョンを今年中に開発する。また、IT技術を開発する人々がワトソンを利用しアプリケーションを開発できるように「ワトソンクラウドプラットフォーム」をSK板橋クラウドセンターに構築する。
例えば、商品検索にワトソンを導入し、商品使用目的、ユーザーの指向、商品説明などのデータを提供すれば、ユーザーに最適な商品を推薦できるようになる。米国ではすでに、ワトソンを利用した見習いロボットをヒルトングループのホテルに導入したり、ユーザーの傾向を分析、商品をすすめる機能をショッピングモールなどでテストしている。
SKとIBMは、人工知能産業を牽引、後押しするため、数億円規模のベンチャー創業支援ファンドを韓国国内に設置した。SK C&Cのパク・ジョンホ社長は「板橋クラウドセンターは、韓国内の人工知能産業生態系を作り上げるためのメッカになるだろう」とコメントを残している。
ワトソンの日本語版サービスは、2016年2月18日から提供が開始されている。