韓国 LG「スマートファーム」事業計画の撤回を公式に発表

ロボティア編集部2016年9月29日(木曜日)

 韓国の大手企業LGグループの情報技術(IT)系列会社であるLG CNS社が、今月21日これまで進めてきたスマートファーム計画「セマングム・バイオパーク・プロジェクト」の公式撤回を表明した。このプロジェクトは、今年7月初めにLG CNS社が発表した事業計画で、韓国最大の干拓地である全羅北道(チョンラブッド)セマングムの産業団地に情報通信技術(ICT)を活用した大規模なスマートファームを設けるというもの。スマートファームとは、肥料、水、土壌など「農業インフラ」を遠隔自動制御できる技術を備えた農場のことである。

 LGグループは同プロジェクトに向けて、3800億ウォン(約350億円)にもなる資金を投入し、およそ76ヘクタールに及ぶ広大な敷地にハイテク栽培施設や植物工場、研究開発施設、加工工場、流通施設などを建設し、2018年の稼働開始を目指していた。

 しかし、地元農家の間では「大手企業の農業参入」として、当初より非常に反発が強かった。なぜならば、LGグループの大規模な農業生産によって、地元農家の生計が脅かされると危惧していたためだ。

 これにちなんでLG側は、事業計画に加え、国内マーケットでの競争は避けるため、地元農家の利益を阻害することはないという点や、あくまでも農家とwin-winな関係であると主張してきた。さらにはスマートファームを運営する上での、さまざまな条件も付け加えた。例えば、作物の栽培は全て既存の農家に任せる点や、スマートファームで栽培された
作物は全て輸出する、などというものだ。

 その後も、農家を説得するための説明会が幾度と開かれたが、農家の反発をおさえることはできなかった。やがて地元農家たちは、共同対策委員会(共対委)を構成してプロジェクトの中断を要求し、全羅北道議会もまた「LGの農業への進出を阻止する決議案」を通過させた。 状況が予想以上に困難を極め、プロジェクトに投資を申し出た海外企業も「待った」をかける始末。当初より農家たちを説得できると自信を示していたLG側も、さすがにプロジェクトの全面白紙化を検討せざるを得なくなった。

LGスマートファーム_反対
スマートファームに反対する人々 photo by shinmoongo.net

 それでも、8月初旬にはLG側が「交渉は難航してはいるが、撤回はない」という立場を明確にしていた。同じく農林畜産食品部の関係者の話からも「地元農家の理解はまだ得られていないものの、LG側に具体的な立場を要請するなど、交渉には積極的で肯定的な雰囲気もあった」と、一時は事態が好転したかに見えた。

 しかし、説明会を重ねるにつれ、さまざまな疑惑が新たに急浮上。今月にいたっては、プロジェクト担当者が国政監査の証人として採択要請を受けるなど、外部からの圧力も高まり、最終的に撤回を公式発表したものとみられる。LG関係者は「8月には撤回の話はなく、決定したのは最近だ」と話している。

 プロジェクトは白紙化したものの、LG側はスマートファームの設備提供事業には着手することで合意している。LG側は「農家が最も反発した部分である、農家が主軸になって生産団地を作るという観点から、設備およびシステム供給事業者として、競争入札に参加する」と主張し、関連技術開発と施設の供給事業を継続していくという意思を明らかにした。