野生動物保護の新たな技術...人工知能で密猟者を追い詰めろ!

ロボティア編集部2016年4月26日(火曜日)

 米・サウスカリフォルニア大学(USC)の科学者らが、密猟の世界的な増加に歯止めをかけるべく立ち上がった。人工知能)を活用した、これまでにない野生動物保護技術の開発を進めている。

 USC研究チームは人工知能を導入した野生動物保護および密猟者摘発のためのゲーム「グリーンセキュリティーゲームス(Green Security Games)」のプロトタイプを開発した。25日、米メディア「クリスチャン・サイエンス・モニター(christian science monitor)」などがその詳細を伝えている

 グリーンセキュリティーゲームスはアルゴリズムを活用して、密猟者の動きを予想・分析するソフトウェアだ。パトロール隊員側はその結果に基づき、密猟を防ぐための事前計画を立てることができる。

 このプロジェクトを支援している米国立科学財団(National Science Foundation=NSF)関係者は「国立公園をパトロールしている警備員がこれまで以上に確実な方法で密猟者の行動半径を予測することができ、野生動物をより安全に保護することができだろう」としている。

 USCに所属するコンピュータ科学者フェイ・ファン(Fei Fang)博士は、現在ほとんどの自然公園で、野生動物の保護システムが非常に脆弱な状況にあると指摘している。またその理由のひとつとして、密猟者たちがパトロール経路を把握しているという点を挙げる。

 ファン博士は、密猟を防止するためのより効果的なパトロールを行うために、USCコンピュータサイエンスシステムエンジニアリング学部のミリンド・タムベ(Milind Tambe)教授とともに人工知能を導入し、密猟者たちの出現を予測するソフトウェアを開発した。

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PAWS(Protection Assistant for Wildlife Sanctuary)」という名称のそのソリューションは、これまでウガンダやマレーシアの国立公園に設置され、テストが行われてきた。両国では象牙を狙う象の密猟が頻繁に起こっていた。ファン博士は、「PAWSを通じて公園内の密猟行為が起こる場所を分析・予測しパトロールを強化した結果、その数が大きく減少した」としている。

 これまで各国の自然公園では、パトロールが手薄な場所に被害が集中していた。しかし、PAWS稼働後は、状況が変化。動物たちの移動経路、過去に密猟が起こなわれた場所などの関連情報を入力後、データ分析を通じて、密猟者が出没すると推定される場所を予測できるようになった。その結果に基づいて、取り締まりを強化した結果、密猟発生頻度を大幅に削減することができたという。関係者は密猟者と人工知能の“かくれんぼ”で、人工知能が圧勝を収めていると指摘している。

 これまでの科学者たちは、密猟を防ぐためさまざまな方法を研究してきた。そのひとつに、動物ロボットを現場に配置し、密猟者をおびき寄せるというものがある。去る2月、ワシントンポストは米国野生動物保護当局が密猟防止のために、多数のロボットを投入していると伝えている。

>>>米動物保護当局「動物型囮ロボットで密猟者をおびき寄せる」

 また去る2月、インド東部のカジランガ国立公園は、密猟者を根絶するためにドローンを導入すると発表した。これまで同国立公園はサイの密猟に悩まされてきた。公園側はドローンで公園の広大な地域を、効果的に監視する方針だという。

 そのように、さまざまなテクノロジーを駆使した密猟掃討作戦が進んでいるが、やはり人工知能の導入はより強力な威力を発揮するものとみられている。USCのファン博士は「現在、PAWSの不足点を補完している。今後、人工知能の能力が強化されれば、密猟者の居場所が減るだろう」と自信をのぞかせている。

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