世界各地でドローン産業が芽吹きはじめている。同時に世界各地域および国家においては、ドローンを利用するためのガイドラインも徐々に定まってきた。
米国では米連邦航空局(以下、FAA)が、ドローン利用のガイドラインを定めている。FAAは2015年12月から、ドローン所有者に対して「登録義務」を課している。255g以上、25kg以下のドローンを所有する者は、ユーザー情報をFAAの無人航空システム(UAS)に登録する必要がある。
登録を済ませたドローン所有者には、証明書と登録番号が付与され、機体にその番号を表示することが義務づけられている。登録しないまま飛行させると、最大2万7500ドルの罰金が課される。また、ドローンで文化財を破損させたり、人命被害を出した場合には、最大25万ドルもしくは3年以下の懲役刑となる。
FAAは、視界を確保することができる時間帯、また飛行高度122m未満でドローンの飛行を許可している。空港から8km以上離れている場合には、空港管制塔の特別な許可なしにドローンを飛行させることができる。
最近、米国では一般人がドローンを銃で撃墜させる事件が頻発している。これは、プライバシー侵害に対して、米国人が非常に敏感だということでもあり、米政府当局が懸念していた問題がにわかに表面化しつつあることも意味する。なお、一般人がドローンを銃で撃退した場合、撃った方が罪に問われることが多く、今後、ドローン使用とプライバシーの保護に関連した物議は加速しそうである。
ヨーロッパの場合、欧州航空安全機関EASA(European Aviation Safety Agency)のガイドラインによって、ドローンの利用が規制されている。EASAは、ドローンを低リスク群(Open Category)、中リスク群(Specific Category)、高リスク群(Certified Category)の3つのカテゴリーに分類してガイドラインを運営している。
低リスク群は、事故の危険性が最も少ないとされるカテゴリーであり、最小限の規制が適用される。具体的には500g未満のドローンがこれに該当する。低リスク群に該当するドローンは、安全性および安全保障上の脅威を防ぐために、空港、軍事地域などでは150m以上の高度で飛行することができない。なお、その低リスク群にカテゴライズされたドローンの管理は、ヨーロッパ各国の警察が務めることになっている。
中リスク群を規制するガイドラインには、様々な安全上の原則が含まれる。これは、ドローンにより発生する事故を防ぐためだ。中リスク群のカテゴリーに対応するドローンに対しては、規制当局が安全性に関連する検査を実施する。例えば、ドローンが飛行中に受ける空圧に耐えることができるかどうか、またドローンの安全運用のための手続きを遵守しているかなど、安全と関連した技術要素が検査される。なお、ドローンオペレーターは、安定性評価とリスク軽減対策などを作成しなければならない。
高リスク群のカテゴリーには、一般の航空機レベルの運用規定が適用される。ドローンを運用する場合、民間航空機に近い免許を取得することが要求される。承認については、欧州航空安全機関が引き受ける。
中国にはドローン関連のガイドラインがほとんどない。政府施設、軍事基地、空港周辺地域を除く、ほぼすべての地域でドローンを飛ばすことができる。そのため、新たに開発したドローンをテスト運用することが容易に可能となる。中国企業がドローン産業に強みを見せていることと、その規制の“緩さ”は決して無関係ではないだろう。
世界1位のドローンメーカー・DJIの躍進は言うまでもないが、最近では、アリババグループのB2Cショッピングモール「タオバオ(淘宝网)」が、物流会社YTOエクスプレスと提携を結び、北京、上海、広州など9つの都市でドローン配送テストを開始している。
韓国の場合、ドローンは「超軽量飛行装置」として航空法(第2条28号、第23条)の適用を受ける。ドローン所有者は、ドローンの種類と用途、所有者の名前を国土交通省大臣宛てに届け出て、届出番号をそのドローンに表示しなければならない。なお、同航空法の適用を受けるドローンは、12kg以上の大型ドローンや産業用ドローンとなる。12kg以下の個人用および研究開発用ドローンに申告義務はない。
一方、安全規則はすべてのドローンに適用される。すべてのドローンは、150m以上の高度を飛行することができない。また、飛行場周辺の管制圏(半径9.3km)以内、軍事安全保障施設周辺および人口密集地域では飛行が制限されており、夜間飛行も禁止となっている。飛行が禁止されている場所でのオペレーションを希望する場合、国防総省や地方空港庁の許可が必要となる。違反した場合、最大で200万ウォン(約20万円)の罰金が科される。
韓国では産業用ドローン関連の申請が複雑すぎるという指摘もある。例えば、12kgを超える商業用ドローンを飛ばすためには、装置申告、事業登録、安全性認証、操縦者証明、飛行承認などの手続きを踏まなければならないのだが、管轄機関を地方航空局、交通安全公団、地方航空局、国防部などが、それらを個別に担当している。
インドでは2014年10月の時点で、ドローンの一般、民間の使用が一律で禁止されている。飛ばす場合は、当局に個別に許可を申請する必要がある。ただし、ガイドラインが定まっていないため、許可がケースバイケースになるというのが実情だそうだ。先月2月の段階で、政府要人がドローンの民間使用(商用利用含む)ガイドラインを作る必要があると言及しており、今後、遅かれ早かれガイドラインが定まる方針だそうだ。
インド固有の事情として、軍事的な問題やテロとの兼ね合いから、ドローン使用を許可することにセンシティブになっているという。一方、農業やその他、民間活用への期待もあり「早く動くべき」という論調も増え始めている。ただ実際には、結婚式などの撮影でドローンが多く使用されているという話もある。ガイドラインの成立を待たずして利用が拡大している状況だ。
日本の場合、申請さえしっかり行えばほとんどのオペレーションは許可されるというのが、ドローンビジネス関係者たちが口を揃えるところである。一方、申請から許可まで時間がかかるという点が問題として浮上しており、産業発展のためには改善すべきではないかという意見も少なくない。
hoto by abc27.com