中国政府が、自国内を飛行するドローン所有者に対して「実名制」を実施する方針だ。
中国工信部は今回、「民用無人航空機実名制登記管理規定(民用无人驾驶航空器实名制登记管理规定)」を発表。6月1日から正式に実施するとした。中国政府は今後、不法盗撮などを行うドローン(中国では「ヘイペイ(黒飛)」と呼ばれる)の飛行を防止しつつ、ドローンの墜落事故で生じうる被害の責任所持を明確にしていく構えだ。
中国では昨今、列車のチケットや携帯電話を購入など、多くのシーンで実名制を導入している。ただし、ドローン分野に実名制を導入し、管理・監督していくとしたのは今回が初めてだ。
発表内容によると、重量250g以上の民間用ドローンの所有者は、実名登録および政府が発行する登録ステッカーをドローンに貼って飛行しなければならない。8月31日以降、これに違反した場合、処罰する方針だという。
2017年5月時点で、中国全土に普及した個人所有のドローンの数は約50万台を超えたと言われている。国内の民間用ドローン市場規模は、2016年に23億元を超え、2018年には110億元に達する見込み。台数にすると、約1400万台の無人航空機が普及すると予測されている。
これまで中国では、ドローンの落下事故などが起きた際、責任を明確にする方法がなかったが、実名制の導入で責任の所在が明らかになり、様々な事故を未然に防止することに繋がると期待が集まっている。
一方、実名登録されないドローンに関しては、政府が「ブラックリスト」を作成、管理監督を強化するなど、いわゆる「ブラックフライ制度」を実施する方針だという。中国工信部は、今年からドローンメーカーの製品情報を収集して、企業の管理を強化する立場も表明している。狙いは、ドローンの安全飛行について社会的関心を高めること、そして所有者の安全意識を向上させることだ。ちなみに中国政府は、2015年8月にすでにドローン所有者のパイロット資格制度を導入している。
なお中国の専門家たちは、ドローン実名制の実施について歓迎する立場を取っている。例えば、中国国際空港運行保証部のロン・ジン(龍俊)副部長は「様々な航空会社の事故を未然に防止することができるようになるだろう」とコメントしている。
「ドローン実名制は、一種のドローンの住民登録証のような役割を担うことになるだろう。政府はこれとともに、ドローン飛行が可能な自由区域と、制限区域など区域設定を適切に進めながら、販売店ごとに販売登録を誘導させるなど、ドローンの発展に積極的な環境を提供しなければならない。(中略)昨年、成都、昆明、重慶など中国の一部の地域の空港で発生した高度400m以下を飛行するドローンと旅客機の衝突事故を踏まえれば、ドローン実名制の最大の恩恵を受ける業界は旅客機市場になる」(ロン氏)
一方、中国ドローンメーカー大手幹部も、法規制の重要性について同意。「適切な法規制がなければメーカー側の成長もドライブしていかない。1日も早い、適切なガイドライン強化をのぞむ」とコメントしている。
世界のドローン市場を牽引する中国企業勢だが、実名制の実施によって、さらなる飛躍の機会を得ることになりそうだ。
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photo by 中国民用航空局ウェブサイト