ドローンを利用して、粒子状物質(PM2.5、PM10など)を除去しようという研究が注目を集めている。
粒子状物質とはマイクロメートル(㎛)サイズの個体や液体の微粒子を指す。日本では粒子径が2.5㎛以下の微粒子である、PM2.5(微小粒子状物質)の名がよく知られている。石炭、石油など化石燃料の燃焼時や、自動車の排出ガスなどから発生し、肺に吸着して様々な肺疾患を誘発する。
粒子状物質が大量に発生している中国では、2014年に政府が国内軍需企業AVICと契約。大気中の粒子状物質を除去するドローンの開発に着手した。計画としては、ドローンに粒子状物質を凝固させる化学物質を積載後、飛行。大気中に散布して、最大半径5km以内の粒子状物質を除去する。その時に凝固した粒子状物質は、雨のように地上に落下する。
中国で開発されている、その粒子状物質除去技術はまだ開発が進められている段階で、化学物質による二次被害なども考慮する必要がある状況だという。また、地に落ちた粒子状物質を処理する術も確立していないため、すぐに実用化するのは難しいと見られている。
一方、人工降雨を用いた粒子状物質除去技術も注目されている。水をかけることは、粒子状物質の濃度を下げるもっとも一般的な解決策とも言われている。
米国・砂漠研究所(Desert Research Institute=DRI)は、人工降雨を降らせる物質を搭載したドローンを飛ばす技術を開発中である。物質は大気中の水蒸気を凝結させて、雨を降らすことができる。以前までは有人ヘリコプターに乗ったり、ロケットを利用していたが、ドローンを利用すればコストを大幅に削減でき、かつ適切な場所に、正確に人工降雨を降らすことができるという長所がある。
その他にも、ドローンで粒子状物質を除去しようという試みは幅広く行われている。
ドイツ・パラス(Palas)社が製作したドローンは、粒子状物質測定器と解析プログラムを搭載しており、空中で、広範囲にわたり測定作業をこなす。一方、米メディアは、除去フィルターを装着したドローン数百台を飛ばし、粒子状物質を除去する方法を紹介している。この構想では、ドローンが頻繁に充電しながら任務を遂行できるよう、熱気球型のドローン充電所を設置。長時間滞空しながら粒子状物質を除去する。
中国のドローン開発関係者のひとりは「空中で大規模な任務を遂行できるドローンは、適材適所かつ、低コストで粒子状物質を除去できる可能性を持つだけに、多くの研究が必要だ」と強調している。