ドローンの演算時間・消費電力を大幅圧縮...ショウジョウバエを模倣したAIチップ登場

ロボティア編集部2020年3月18日(水曜日)

ドローンが長時間にわたって空中でタスクを処理するためには、バッテリーの容量が大きくなければならない。軽い機体を目指す上では足かせとなる。バッテリー容量と機体の軽さは相反するもので、 どちらか一方を犠牲にしなければならない。

台湾の国立清華大学の研究陣は、そうした問題を解決するためショウジョウバエの視神経を模写した人工知能プロセッサーを開発したと発表した。 障害物の検知や回避にかかる演算速度や消費電力を、大幅に削減することが期待されている。研究チームは、「今回開発したAIチップはUAVが強力なパワー節約モード(ultra-power-saving mode)状態で障害物を探知し、自律的に回避できるように支援する」と説明している。

なおKea-Tiong Tang氏ら研究チームによると、大半のUAVは障害物を認知・回避するために電磁気波の伝送や反射に依存する。 しかし、そのような方法では多くの電力を消費する。 代案として光学レンズを使う方法があるが、イメージを取得して分析するのに多くの時間がかかり電力消費量も決して少なくない。

そこで研究チームは、ショウジョウバエの視神経をモデルにして、ドローン用AIチップに組み込み「情報の過負荷問題」の解決を目標にした。従来のカメラやスマートフォンに使われるイメージセンサーは数百万ピクセルに達するが、ショウジョウバエの視神経は約800ピクセルだ。 低いピクセルにもかかわらず、ショウジョウバエの脳は輪郭やコントラストのような視覚的信号を処理する際、不要な情報を自動的に選別する探知メカニズムを持っている。 ショウジョウバエは、他の物体との衝突を防ぐために動く物体にのみ焦点を合わせて視覚情報を獲得する。

研究チームは、ショウジョウバエの探知メカニズムを応用し、ドローンに何が重要なのかに焦点を合わせて、衝突可能性のある物体や距離を判断できる方法を学習させた。

研究チームは、今回開発されたAIチップは、インメモリーコンピューティング(in-memorycomputing)分野で技術的な突破口を作ったと指摘している。 コンピューターやスマートフォンはデータをメモリーから中央演算装置に移さなければならないが、一度処理されたデータは保存のために再びメモリーに移さなければならない。 この過程で人工知能ディープラーニングプロセスに必要なエネルギーと時間の90%を消費する。 しかし、今回開発したAIチップはメモリー内部で演算を行い、効率性を画期的に改善するという説明だ。

Photo by National Tsing Hua University