米ナスダックにも上場し、アリババに次ぐ規模を誇る中国大手インターネット通販「京東集団」は8月25日、広東省東莞市にスマートシティを建設すると発表し、話題となっている。北京市で同日行われた調印式では、京東集団と東莞市が戦略的パートナーシップ協定を結び、Eコマース、AI開発、クラウド・ビッグデータ分野において東莞市が全面的にバックアップすることを約束。同市を含む中国の華南地区をITビジネスの中心地にすることで合意したという。
拠点となるのは東莞市内にある、深セン市寄りの鳳崗鎮というエリア。ここに同社が持つEC、金融、テクノロジー関連の事業を集中させて資本を投下。関連企業なども誘致して、スマートシティを作り、都市の質を向上させていくという。
京東集団といくつかの投資会社は、このプロジェクトに300億元(約4800億円)を投じる。都市完成後の年間生産額は5600億円以上となり、税収も480億円になるという。拠点となる鳳崗鎮雁田村は面積54万平方メートルの広さで、建設可能な延床面積は220万平方メートルに及ぶ。都市建設工事は3~4期にわけられ、4~6年後の完成を予定しているという。すでにドローンと自動走行、フィンテックの分野でのプラットフォームプロジェクトが動き始めている。
かつて海外輸出向け製品の工場が軒を連ねた東莞市。一方で同市は数年前まで「中国最大の売春都市」と呼ばれ、不名誉なレッテルに苦しんできた。習近平政権発足後、売春産業が一網打尽され、市のGDPの1~2割を占めたといわれる売春産業(飲食や服飾・美容など関連産業を含む)は壊滅。人件費の高騰で海外向け工場の閉鎖も相次ぐ中、東莞市は衰退傾向にあった。しかし、中国のAI・ロボティクス分野の急成長を受け、隣の深セン市が「赤いシリコンバレー」と呼ばれるほど発展した今、地の利(広州・深センからともに高速鉄道で30分程度)を活かして東莞市にハイテク産業が数多く流入し、起業も増えているという。
京東集団という、いち民間起業が街ごと作ってしまうのは中国では前代未聞だ。果たしてどんなスマートシティができるのか。この計画には、世界中から注目が集まっている。
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