英ケンブリッジ地方が掲げるスマートシティ計画...成功のカギは「アプライド・ゲーム」

大澤法子2017年11月29日(水曜日)

世界の名門大学を擁し、学問の街として名を馳せる英ケンブリッジ地方。そこには大学発のスタートアップが集積しており、最新テクノロジーの発信地として注目を集めている。

AIなどの最新技術を活用したスマートシティ計画は世界レベルで着々と進行しつつあるなか、ケンブリッジにおけるスマートシティ計画の概要を地元メディアが報じた。

ケンブリッジ・スマートシティ計画のカギを握るのが“ゲーム”だ。スマートシティを促進するプロジェクト「リアクター(REACTOR)」が発足してから2年目を迎えようとする今、運営者らは「ビッグ・ゲーミフィケーション・チャレンジ2018」を公示。「ビッグ・ゲーミフィケーション・チャレンジ2018」は、特定の領域に対する社会的課題の解決に重きを置いており、アプライド・ゲーム(社会的課題解決の疑似体験ゲーム)で、ユーザーの経験値を上げたいとしている。

同プロジェクトを主導するのはケンブリッジのアングリア・ラスキン大学。欧州開発ファンド(European Regional Development Fund=ERDF)から資金を供与し、ケンブリッジおよび隣接する都市ピーターバラの企業や専門家との連携を図りながら、アプライド・ゲーム部門の拡張をサポートしていく見通しだ。

一方で、多くのスマートシティ計画に立ちはだかる “没入環境の構築”の壁を突破するというもうひとつの狙いがある。

ケンブリッジ議会のスマートシティ・プログラム管理者を担当するダニエル・クラーク(Daniel Clarke)氏は、未来のケンブリッジに対し「制約された都市」と表現しつつ、「スマートシティ化に伴い、約3万5000棟の新築の家屋が建てられ、5万名を超える人々が居住し、4万4000件もの仕事が新たに生み出される」と言及。ゲームや新技術を通じてケンブリッジへの関心が高まるにつれて、ケンブリッジはゲームユーザーにとって熱狂的な環境となり、その地やコミュニティへの帰属意識が生まれる。そして、交通や医療、大気品質、住宅、持続可能な環境への圧力にもつながり得るとクラーク氏は説明した。

ケンブリッジ・エレクトリック・トランスポート(Cambridge Electric Transport)の創業者ピーター・ドー(Peter Dawe)氏は、「ビッグ・ゲーミフィケーション・チャレンジ2018」の発表イベント時の基調演説の際に、ペダルの回転や電気により駆動する1人用車両「シティポッド(CitiPod)」を披露。「シティポッド」は今回のスマートシティ計画を左右する新技術のひとつであり、電気自転車向けガイドラインに沿って製造されたものである。ちなみに、ドー氏は現在に至るまで社会的課題の解決に直結する90の事業を興している。

ドー氏が目指すは“革命”ではなく、“進化”だ。「ビッグ・ゲーミフィケーション・チャレンジ2018」を通じて新たな概念が誕生し、都市移動が進化することを切望している。

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大澤法子

記者:大澤法子


翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。人間同士のミスコミュニケーションに対するソリューションの担い手として、ロボット・VRなどがどのような役割を果たし得るかを中心に追及。

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