深センでスタートアップが急増している。その背景を探るべく、スタートアップ支援サービスである「サラダ大学(沙拉大学)」という施設を訪問しインタビューを行った。
深セン市の南山区にはシリコンバレー的な意味を持つ「科技园」と呼ばれるエリアがあり、その一帯に多くのIT企業が乱立している。中国ITモンスターの代表格であるテンセントもこのエリアに自社ビルを構えている。
サラダ大学は、起業したいという想いを持った人達が登録する起業支援のサービスだ。大学のときに同級生だったという三人組がスタートさせ、現在200名以上が登録している。登録者の多くは20代と若く、特にマーケティング関連に興味を持っている人が多い。これから起業したい人、すでに起業している人が混ざり合っている。中には網紅(ネット上のインフルエンサー)になりたいという人もいるようだ。
特にゼロイチのフェーズを手助けするというコンセプトがあり、この大学に入ることで起業のノウハウを学べる。特にインターネットビジネスを中心に、基本的な経営学、マーケティング、そして中国で何より大切な人脈も構築できる。定期的にハッカソン的なイベント「ビッグサラダ」を各国で行っており、52時間以内にビジネスモデルを作りサービス開始させるという。アフリカ人やイタリア人など様々な国籍の登録者がいる。
今までに成功者を輩出した事例として、FaceUというアプリ(Snowの中国版)や、JINGJINGというAIハードウェア(ドローン)のプロダクトなどがある。
サラダ大学では、ベンチャーキャピタルとも繋がっており、イベントを通して素晴らしいスタートアップを生み出し、資金調達もサポートしていくという。中国では有り余るキャッシュをシードフェーズに向けており、その額は年間で3~5兆円規模と言われている。日本のVCが近年行ったシード投資の年間総額が2000億円ほどなので、すでに約20倍の規模であり、アメリカの7.5兆円に迫るほどの勢いだ。政府のスタートアップに対する様々なサポート(オフィス補助など)も背中を押し、このようなスタートアップ支援プロジェクトも数多く生まれている。
創業メンバーの3人は同級生で26歳とのこと。彼らと話をしていると、考え方がクリエイティブで、日本の起業家と話しているレベルと大差はないと感じた。むしろ、中国という巨大なマーケットで挑戦している彼らは、常に視野が広く、スタートアップでありながらもニッチな考え方ではない。世界を獲りにいこうとしている姿勢が見えた。
「中国マーケットで挑戦する」という日本人がもっと増えてほしいと感じた。サラダ大学のようなサービスに登録をして現地に住み、世界を狙える環境と人脈と身につけるというのも面白いかもしれない。このサービスに登録するには、年間3000元(約5万円)の会費がかかるが、やはり実際に深センに来ないと登録できないらしい。国境と文化の違いというハードルを超えて、日本はどれだけ世界に出ていけるだろうか。
(執筆・取材 白井良)
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■原文>>>深センのスタートアップ支援サービス「サラダ大学」を訪問取材
■参照元 深セン経済情報