【中国フィンテック裏話】深セン出張中に交通取締に遭いスマホ決済で罰金を払った話

出水鴻正2017年12月7日(木曜日)

スマホ決済、シェアバイク、電気自動車……急速なスピードで進む中国のハイテク社会だが、その“震源地”である深セン市の隆盛ぶりは日本でも報じられ、その成長をひと目見ようと数多くの日本人が出張で訪れるようになっている。

そんななか、11月に深センに出張した日本人から「思わぬところでスマホ決済の恐ろしさを感じた」との報告を受けた。都内IT企業に務めるAさん(30代)が、出張中に起こったある体験談を告白してくれた。

「今年で深セン出張は3回目でした。ミーティングや視察を終え、市内のホテルへ戻ろうとしていました。現地在住の日本人にアテンドしてもらっていたので、彼の案内でホテルまでの道のりを歩いていたんです。道中、『近道だから』と自動車専用のアンダーパスに入った。地元民もみんな普通に通行していたし、歩道はなかったけど、同じように気にせず歩いていた。すると、アンダーパスの出口に警察官が何人も立っていて『こっちに来い』とジェスチャーしたのです」

当初、自動車の交通取締りかと思ったAさんだが、実は歩行者の取締りだった。近年、中国政府は交通マナーの向上に躍起になっており、自動車だけでなく、歩行者への取締りも厳しく行うようになっている。とくに深センや上海などの大都市では、その傾向が強いという。Aさんは「身分証明書を出せ」と警察官に言われ、パスポートを提示すると、粛々と違反の処理を始めたという。

「警察官は専用のスマホ端末に、パスポート番号や漢字氏名などを入力した。すると、スマホに装着したモバイルプリンターから印字された違反キップが出てきました。それを渡されて『はい、もう行っていいよ。この道路は車道だから、次回から通らないように』と注意されました。違反キップを見ると『罰金20元(約340円)』と記載されていたので、同行の日本人に聞いてもらったら、『旅行者なので今回は警告のみ、罰金は払わなくていい』と」

こちらが違反キップ(A氏提供)

しかし、ホテルに到着して違反キップをよく見てみると、処分の項目にはたしかに「罰款(罰金)」となっており、「15日以内に払え」との表記が。そして違反キップの一番下にはなんと、QRコードが付いておりアリペイやWeChat Payで罰金を支払えるとあったという。ちなみにA氏は中国に銀行口座がないので、チャージはできないが、現地在住の日本人に現金を渡し、送金機能を利用してWechat Payを出張中に頻繁に利用していた。

QRコードをスキャンすると深セン交通警察の決済画面が立ち上がった!(A氏提供)
こちらが支払画面。罰金は即納付された(A氏提供)

「今後も中国出張の機会があると思うので、出入国で変な記録を付く可能性があるなら、払ってしまおうかと。そもそも交通ルールを守らなかった僕が悪いし、わずか300円だったから……。で、iPhoneでQRコードをスキャンして払っちゃいました。深セン出張では、今までもあらゆる決済をスマホでして、その便利さに感動していたんですが、まさか交通違反の罰金もスマホ決済できるなんて、驚きましたよ」

あらゆる商店や屋台、市場での買い物から、物乞いへの施しまで、あらゆるシーンでスマホ決済が広がっている中国だが、警察など政府系機関でも導入が進んでいるようだ。一方で個人情報と紐付いた違反履歴や罰金支払履歴がデータベース化され、どのように“利用”されるか不安な面もある。さておき、日本にいようと海外にいようと交通ルールを守るのは当たり前。A氏のような行動は慎むべきだ。