【中国フィンテック体験ルポ】深センで現金を持たず6カ月生活してみた

株式会社ホワイトホール2017年12月18日(月曜日)

最近、中国で急速に進むキャッシュレス化がニュースでも報道されている。その中では「飲食店や個人経営のお店、露天でも使える」と書かれているが、実際にはどうなのか。筆者が中国の深センで、半年間現金を持たずに生活するというチャレンジを行った。

分かりやすく私自身の1日を書きだしてみる。

朝、出勤時にシェアリングサイクルの「MoBike」で会社へ向かう、MoBikeの決済はもちろんWeChatペイだ。私の場合は月額カードを持っているので、そのままQRコードをスキャンして自転車に乗り、支払いも月額なので無し。ちなみに月額カードはキャンペーン時に購入しており、3カ月で5元(約90円)である。お得どころの騒ぎではない、ほぼタダ同然である。

お昼、この日はローカルの個人経営レストランにて昼食。食事の支払いはWeChatペイで支払う。レジにあるQRコードをスキャンするだけである。午後、コーヒーが飲みたくなったので、カフェへ、ここでももちろん支払い可能。

会社から荷物を送るため宅配業者に集荷依頼、集荷時にそのスタッフの持っている端末を使いWeChatで支払う。もしくはスタッフ個人のWeChatに支払うことも可能だ。

夜、友人たちと食事へ移動、タクシーに乗り、精算の時にも一言「WeChatで」といえば、運転手がスマホでQRコードを出してくるので、そこで支払い。

夕食時も友人たちと食べ終わって会計時には誰かが代表してお店にWeChatで支払い、その後代表者に割った金額をWeChatで送る。中国では今この方法で割り勘をしている。割り勘時の煩わしい小銭のやり取りも必要ない。

こんな感じで、ほとんどの生活に必要な場所で使えてしまうのである。何人かで食事に行った際にたまたま中国に来たばかり等の理由でまだWeChatペイを使えない人が居ると、持っていない人がマイノリティなため、申し訳なさそうにまだ使えないんで現金でも良いですか?と聞く状況である。

1日の流れはこんな感じであるが、他にも支払い場面での活用はたくさんある。例を上げてみよう。

公共交通機関のカード(SUICAやICOCAと同じもの)は、駅の自動チャージ機でWeChat決済可能なので、チャージも現金いらず。新しいスマホであればアプリからの決済も可能。

公共料金も全てがWeChatとつながっており、「公衆号(ゴンジョンハオ)」と呼ばれるWeChatのオフィシャルアカウントのメニューから支払いが可能である。家のインターネットや、ガス等の支払いもWeChatで支払い可能である。

またWeChatペイやアリペイは基本的に銀行とリンクしているため、アカウントに残高が無くてもデビットカードのように使った分をその場で口座から引き落としが可能、チャージしたりする必要がないところも、便利な点と言える。

ちなみに筆者の場合、家の家賃もWeChatで支払っている。銀行引き落としのケースも多いが筆者の場合は不動産の担当者に直接払えばOKとのことなので、そうしている。

街中での娯楽関係も、カラオケやゲームセンターなど全ての施設で決済可能。基本的に使えないところを見たことが無いほどだ。

先日、深センから広州に行くため高速鉄道に乗ったが、ここでは窓口でアリペイのみの表示がありWeChatは使えなかった。しかしキャッシュレスで支払うこと自体は可能である。

周りの中国人に半年以上キャッシュレス生活を送っている友人に不便なことや、使えなかったなどマイナス要素が無いかを聞いてみたが、そういう事はまったく無いとのことだった。

野菜や肉の卸市場でもQRコードがあったとのことである。現在では生活の中でWeChatペイは当たり前になっており、これがなくなると不便とすら感じるようになってしまっている。

とにかく至る所にQRコードがある。最近では飲食店でメニューを置かずに注文もWeChatを使って注文する店も見かけるようになった。WeChatを持っていない人、決済できない人はこの店では食べることが出来ないわけである。そのくらい当たり前のことになっているのが現状である。

スマホを使えない人や老人などに対しての配慮は皆無で、無理やりスマホ社会にバージョンアップしているからこそ可能な事である。日本のようにスマホを使えない人に対してのサービス(ガラケーなど)を残すようなやり方はここにはない。良し悪しは別として、強引にバーションアップするからこそ可能なキャッシュレス化であり、中国ではその変化に老人も付いて行かざるを得ない。それを目の当たりにすると、日本はどれだけ過保護で優しい国なのだろうと感じてしまう。

このキャッシュレス化がライフラインとしても出来上がってしまったため、今後これが定着して行くのは確実だ。

日本でもこのように使えると便利ではあるが、電子マネー自体が乱立している上あまり広がっていない社会なので、なかなか難しいのが現実だろう。筆者個人の考えとしては、コンビニなどでも使えるようになってきたSuicaが、EC決済や個人間送金にまで広がれば、日本でも多少はキャッシュレス化が進むかもしれない。

という訳で、半年間まったく現金を使わずに生活するというチャレンジは成功を果たした。
中国ではこの先もキャッシュレスで生活することは全く問題ないだろう。いつか現金を見なくなる時が来るかもしれない。

【取材・文:佐々木英之】
中国深センの富門グループ(Richdoor Group) にて10年間のビジネス経験。 日本に出張すると数日で深センに帰りたくなるという「深セン通」である。

■原文:【中国のキャッシュレス化を体験】半年間、深センで現金を持たずに生活してみた
■出典:深セン経済情報

株式会社ホワイトホール

記者:株式会社ホワイトホール


中国深センでのビジネスサポート業務を11年に渡り運営し、ビジネスコンサルを始め、多くの中国ビジネスの立ち上げに参画。取り扱い業務は中国関連コンサルティング、越境ECサポート、広告代理業務、営業代行、通訳、翻訳、アテンド、OEM、ODM、IoT関連事業(工場マッチング)、展示会への出展、商標取得代行(全世界対応) など。