Googleがマシンラーニング(機械学習)などAI技術を活用した新しい文化プロジェクトを公開した。
フランス・パリに拠点を構えるGoogleの「アート・アンド・カルチャー研究所」(Arts and Culture Lab)は、3月上旬、「アート・パレット(Art Palette)」、「ライフ・タグ(Life Tags)」、「モマ・ツール(MoMA tool)」のみっつツールを公開した。
まずアート・パレットは、写真の被写体の色味に合わせて、全世界の美術館が所蔵する資料を検索してくれるツールだ。写真の中の人物と似た対象を検索してくれる既存サービスと似ているが、対象が人物だけではなく物や風景全体にまで拡張され、色味で検索できるようになったのが特徴だ。例えば、ある部屋をスマートフォンカメラで撮影した後にアート・パレットを使用すると、資料の中から部屋のインテリアに色味が似た作品を瞬時に見つけてくれる。ユーザーは、家の色調に合った作品を選んで、インテリアとして飾ることができる。ファッションおよびインテリアデザイナーらのインスピレーションを刺激することに繋がればというのが、Google側の期待だ。
ライフ・タグは、米国の写真雑誌「ライフ」(LIFE)のデジタルアーカイブに、AIキーワード検索機能をつけたサービスだ。創刊からライフ誌が撮り貯めた写真は数千万枚にのぼるが、実際に誌面に掲載されたのは約5%に過ぎないという。Googleの高度なコンピュータビジョンアルゴリズムは、そのうち約400万枚を分析し、自動的にキーワードを生成。体系的に分類して瞬時に検索できるようにした。例えば、ユーザーが「静か」(calm)という単語を入力すると、静寂を象徴する写真が自動的に検索されるといった具合だ。
ライフは広告費の急減やインターネットの普及で2007年廃刊した後、ウェブサイトで細々と運営が保たれている。Googleの新ツールの登場によって、ひっそりと息をひそめる歴史的な写真の多くに、改めて注目が集まる日がくるかもしれない。
一方、モマ・ツールは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵する写真作品群の情報を、マシンラーニング技術で検索できるようにしたツールだ。
MoMAは近現代美術作品を中心に所蔵・展示を行う世界有数の美術館に数えられているが、個々の作品について情報が欠落しているケースが多かった。そこで専門知識を備えたキュレーターが過去の展示作品の情報を見つける作業が必要になるが、その時間は最低でも数ヶ月を要していたという。しかし、新しいAIツールにより大きく作業効率が向上し、作業時間も短縮されたという。
ラボを率いるダミアン・ヘンリー氏は、それらアートプロジェクトが人々の検索を助け、未来の技術をめぐる議論において、創造性や新たな発見の礎になることを望むと話している。
Photo by Google Arts and Culture Lab HP