UCサンフランシスコの助教授、また心臓の専門医を務めるリマ・アルナウト(Rima Arnaout)氏らは、心臓病と人工知能(AI)に関する研究結果を発表。研究チームは、ディープラーニングのひとつ「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」を利用して、心臓の超音波を分類きるAIシステムを開発した。
心臓は非常に複雑な構造を持つため、超音波検査機はさまざまな角度から患部のビデオを撮影することになる。そしてその分類作業は、人間の心臓専門医が最初に行う業務に相当する。
一般的に心臓専門医は、比較的、高解像度な心超音波ビデオを見て状況を把握する。しかし、今回は研究のため、ビデオクリップから取得された60×80ピクセルのモノクロ静止画が使用された。実験では、そのモノクロ画像をAIと心臓外科医の双方に、15種類のカテゴリーに分類させるようにした。結果、AIは92%の精度を達成。一方、専門医の精度は79%にとどまった。
アルナウト氏は「人間の医師は、優れた心超音波検査者だった。ただ、画像が縮小され慣れていない作業となり、カテゴリー分けが困難だったようだ」と補足している。なお本来の診察では、専門医が同作業の後、約20以上の項目をチェックするという。今回は、その最初の作業をAIに代替させてみたというわけだ。
アルナウト氏は現在、様々な病気や心臓の問題を識別するために、その後の診察を行える新しいバージョンのAI技術も開発中だ。人間の心超音波検査者は、心臓全体を俯瞰的に診察し、患者の体に何が起こっているか把握する能力があるが、同じような性能を持ったプラットフォームを構築することがアルナウト氏の関心事だという。
なおアルナウト氏は、開発中のAIシステムが自身の目標に達しても、人間の心臓専門医の仕事がなくなるとは思わないとも指摘している。専門医たちは、画像を読み解く術だけではなく、医学全般についても学習・訓練する。そのような複雑な知見やノウハウが、AIによってすぐに代替される可能性は低いというのが、アルナウト氏の主張だ。
医療現場で使われる画像認識AIの性能は日々高まっていると。それでも、細分化された専門領域をカバーしたカスタマイズツールになるためには、各専門医たちのアイデアや知見が必要となってきそうだ。
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