専門医のように患者に診断書を発行できる、人工知能(AI)搭載型の医療機器が米国で初めて販売許可を得た。ここ数年、IBMワトソンのように医師を補助する人工知能が注目されてきたが、人間の医者に頼らず診断結果を下せるAI医療機器がいよいよ登場したことになる。
米食品医薬品局(FDA)は、米国医療機器メーカー・IDxが開発した眼科用AI医療機器「IDx-DR」の最終販売承認を下したと4月11日に発表した。IDx-DRは、患者の網膜画像を分析し、糖尿病網膜症を診断する。糖尿病網膜症は、高血糖が原因となり網膜血管が損傷、視力が低下する疾患。失明のリスクもありうる眼病である。今後、IDx-DRのような医療機器が本格的に普及すれば、患者は病院で長い待機時間を消耗することなく、高度な専門診療を受けられることなる見込みだ。
糖尿病網膜症は、発症初期には目立った症状が現れず、患者が適切な治療時期を逃す場合が多い。 FDAによれば、米国では毎年2万4000人がこの病気にかかり、半数以上が適切なタイミングで検査を受けられずにいたという。というのも、米国では眼科医の診療予約が簡単ではなく、待機時間を削減するため精密検査を省く場合が多いからだとされている。
IDx-DRは、患者の網膜画像を分析することにより、1分未満の短い時間で糖尿病網膜症を診断することができる。まずカメラで網膜の画像を二枚ずつ撮影。続いて、その画像をマシンラーニングを用いたAIソフトウェアに入力し、糖尿病網膜症を患っている患者の画像データと比較・診断する。仮に疾患が発見された場合、IDx-DRは手術・治療が必要だという所見とともに、診断書を眼科医に提供する。なおIDx-DRは昨年、糖尿病患者900人を対象にした臨床試験で、糖尿病性網膜症患者を87.4%の精度で見抜いた。陰性の場合の診断精度は89.5%にのぼったという。
現在、世界のIT大手も医療用AIの開発に参入している。グーグルディープマインド、マイクロソフトがその一例だ。IDx-DRの登場とともに、医療用AIは次のステージに進むことができるのだろうか。注目だ。
Photo by IDx