米AliveCor社が心臓病「QT延長症候群」向けAI診断ツールを開発…日本の患者数は約2万人

大澤法子2017年7月31日(月曜日)

 人工知能(AI)で循環器領域の診断・支援を解決する米スタートアップ・AliveCorは19日、メイヨー・クリニックと業務提携し、子供の突然死を招く心臓病「QT延長症候群」向けAI診断ツールを開発することを発表した。

 QT延長症候群とは、心筋細胞の電気的回復が遅延することで起こる心臓の病気を指し、心電図のQ波の開始点からT波の終了点までの間隔が延長するさまからそう呼ばれている。QT延長症候群には遺伝性と後天性の2タイプがあり、特に子供の遺伝型は突然死のリスクが高いと言われている。日本では約2万人の患者がいるといわれている(難病情報センター調べ)。

 QT延長症候群の治療法については十分確立されており、QT延長症候群と診断された後の治療は比較的スムーズに行われる。一方でその診断は容易ではなく、てんかんと疑われるケースも少なくない。その間症状は進行し、取り返しのつかない状態へと発展する可能性がある。

 そこで提案されたのが、QT延長症候群の世界的権威であるメイヨー・クリニックのマイケル・アッカーマン(Michael Ackerman)医師と共同で診断AIを開発する計画だ。長期的には既存のAFibアルゴリズムに加え、高カリウム血症患者向けに同病院の研究者らと開発中のアルゴリズムなどを統合し、モバイル用のデバイスとして提供予定。可能性のあるより多くの病気・症状の中から判定できるようにするという。

 QT延長症候群向けAI診断ツールは言わば、市販の体温計のような存在であるとAliveCorのCEOヴィック・ガンドトラ(Vic Gundotra)氏は説く。体温計の場合、体温を測定し、病院で診てもらわないといけないほど危険な状態であるかどうかを自分の目で確かめることが可能である。この体温計と同じ感覚で使用してもらえるよう、QT延長症候群向けAI診断ツールを各家庭に普及させることが同社の狙いだ。

 循環器系の診断技術は進歩しており、米スタンフォード大学の研究グループは今月上旬、ディープラーニングで14タイプの心臓の不整脈を診断することに成功。人間の医師を上回るレベルであると報告した。

Photo by Mark Krynsky

大澤法子

記者:大澤法子


翻訳者・ライター。1983年、愛媛県生まれ。文学修士(言語学)。関心分野は認知言語学、言語処理。医療・介護分野におけるコミュニケーションに疑問を抱いており、ヘルスケアメディアを中心に活動中。人間同士のミスコミュニケーションに対するソリューションの担い手として、ロボット・VRなどがどのような役割を果たし得るかを中心に追及。

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