北朝鮮ハッカー部隊を「AI人材」として登用する...次期ソウル市長候補が仰天発言

ロボティア編集部2018年5月18日(金曜日)

これまで韓国大統領候補として選挙活動を続け、現在ではソウル市長候補の一角となっている政治家アン・チョルス氏(正しい未来党)が、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)との融和ムードが高まるなかユニークな発言し、社会の注目を集めている。

アン候補は、韓国の大手紙のひとつ「ハンギョレ新聞」のインタビューを受け、ソウル市長選の公約を語った。そのなかで「北朝鮮のサイバー部隊を人工知能専門家として使おう」という趣旨の発言を行った。一体、どういうことだろうか。以下、インタビューの内容を一部引用する。

「北朝鮮の北朝鮮のサイバーハッカー部隊は注目に値する。韓国はそちら(のリソースや能力)が足りていない。経済交流が活性化すれば、まず北朝鮮の“サイバー戦士”たちを人工知能専門家として使おうと思う。サイバー戦争の脅威も減るし、彼らも国家発展のためにともに仕事ができるようになる。ソウル市がそれを牽引できる」(アン氏)

なおアン氏は、現在、韓国最大級のコンピュータセキュリティ企業となった「アンラボ」を起業した実業家でもある。そのITやテクノロジーに詳しい政治家という立ち位置から、北朝鮮との距離が縮まる時代を想定した、朝鮮半島の「人材活用構想」について語った形になる。

北朝鮮のハッカー部隊は通称「121部隊」などの名で知られており、韓国社会はそのサイバー攻撃によって少なくない被害を受けてきた。実は、韓国・文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長が4月27日に板門店で歴史的会談を行った二日前にも、韓国の省庁に対して大規模なサイバー攻撃が加えられた事実が明るみになってもいる。

南北の融和ムードが本物なのか、定期的に行われる政治的ポーズに過ぎないのか、いましばらく見守る必要がありそうだが、前者ならアン氏の「北朝鮮ハッカーをAI専門家に登用する」という構想はとても興味深い。もちろん、他国からは道徳的な批判が相次ぐかもしれないが、メリットしかない両国にとっては気にもならないだろう。

アン候補はまた、歴史学者であるユヴァル・ノア・ハラリの著書「Homo Deus」に、北朝鮮が第4次産業革命の巨大な実験場になりうる可能性が示唆されているとして、その将来にも期待感をあらわにした。

「自動走行車を導入する際、他の国では制度を一気に変えることができないが、北朝鮮はひとりの人間が決めるだけで次の日からすべてを変えることができる。北朝鮮が自動走行車のメッカになりうる可能性を見ている」(アン氏)

確かに先進国では新しいテクノロジーを導入する際に障害が大きい。そこには、法律や旧来のシステムとのすり合わせ、利権など、さまざまな要素がある。しかし、北朝鮮にはそもそも排除すべき古いシステムやテクノロジー、そして関連法制度がそもそもない。テクノロジー好きのギークたちにとっては、地球に残された数少ない“楽園”となるかもしれない。

今後、南北の接近をテクノロジー分野から見ていけば、政治や外交とは異なる視点が現れてくるかもしれない。

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