自動運転分野でアメリカに大規模投資…鴻海・郭会長の「フライングイーグル計画」とは

ロボティア編集部2017年8月8日(火曜日)

 世界最大の電子機器メーカーである台湾のフォックスコン(鴻海科技集団/富士康科技集団)が、米ウィスコンシン州の液晶ディスプレイ(LCD)パネル工場に続き、ミシガン州でも自動車産業分野に数十億ドルを投資する計画だと明らかにした。

 8月6日、香港「経済日報」によれば、フォックスコンの郭台銘会長は、記者とのオンライン会見を実施。「米国のいくつかの州と接触して投資交渉を進行中」「ミシガン州への投資が早い時期に確定する」と述べたという。なお郭会長は同日、深センでミシガン州リック・スナイダー知事に面会している。

 郭会長は、まだ投資額を発表する段階ではないが、投資の方向性としてはコネクテッドカーや自動走行車など、次世代自動車技術分野になるだろうと指摘。加えて「米国の自動車発展は依然として中国より進んでいる」「自動走行技術のほか、人工知能(AI)とディープラーニング技術にも関心がある」と述べたという。

 郭会長と米ドナルド・トランプ大統領は先月26日、フォックスコンがウィスコンシン州南東部に100億ドル(約11兆円)を投資し、LCDパネルを生産する大規模な工場を設立するとホワイトハウスで発表した。その後、トランプ大統領は、米の商工人リーダーたちに向けて「フォックスコンの米国への投資額が明らかされた金額よりも3倍以上多く、300億ドルになるようだ」と、郭会長の非公式発言を伝えたことがある。これに対して郭会長は「まだ確定したわけではない、ウィスコンシン州への投資のほか、他州でも投資交渉を進める」としていた。

 フォクスコンが、トランプ大統領の支持基盤である中西部ラストベルト(衰退した工業都市)に集中投資しようとしている点は注目をひくだろう。米国中西部のミシガン州は、米国の自動車産業の心臓部・デトロイトが位置する場所でもある。 GM、フォード、クライスラーがすべて、そこに本社を置いている。

 香港サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)は、フォックスコンの投資を渇望する米国の州が、工場設立時の税制上のメリットと補助金を前面に打ち出し、人件費上昇で職人確保が難しい中国内の生産コストよりも低くとどまることを立証しようとやっきになっていると伝えている。

 一方、香港のジャーナル誌「亜州週刊」の最新号は、郭会長が「フライングイーグル(Flying Eagle)計画」という名称で、米国の“緊急救援”に乗り出したと伝えている。

 フライングイーグルは、米国での工場設立と数万人規模の雇用創出を通じてトランプ政府を支援し多のち、日本の先進的な技術、中国の製造工場と連携させ8KクラスのTV生産、5Gインターネット関連製品、医療手術用機器などの精密化を推進するというものだ。加えて、ビッグデータ市場に対する準備を整えて2020年の東京五輪を迎えることで、米中日の利点や優れた側面を融合させるというのが、郭会長の戦略だと亜州週刊は伝えている。

 実際、郭会長は今回のオンライン会見で、今後、中国と米国への投資が全体的に増えるが、どちらか一方に集中することはないと強調。「事業拡大のために、異なる地域の利点を利用する」「米国での投資拡大が、必ずしも中国での投資の減少を意味するものではない」と述べた。

Photo by Barbara Eckstein(via flickr)