iPhoneをハッキングした天才ハッカーが自動走行車を自作

ロボティア編集部2016年1月9日(土曜日)

 iPhoneのジェイルブレイクに個人として初めて成功した天才ハッカー、ジョージ・ホッツ(George Hotz、28歳)。彼は約1ヶ月間、米サンフランシスコにある自宅のガレージで、コンピュータ自ら学習する「アダプティブ・ラーニング」を利用した自動走行車を開発してきた。グローバルIT企業が天文学的な研究費を積み重ね開発に勤しんでいる自動走行車を、個人が開発すると聞くととんでもないような話に聞こえる。しかし、彼は本気のようだ。

 ホッツ氏は、自身が自動走行車として改造した2016年型アキュラILXを公開。その車の屋根にはレーザーを利用するライダー(Light detection and Ranging=Lidar)が、またバックミラー付近にはカメラを装着されている。加えて、助手席前方のモノ入れはコンピューティングハブに変貌を遂げ、運転席と助手席の間のギアがあった場所には、ゲームをするときに使うようなジョイスティックが設置されている。そして、ダッシュボードの中央には21.5インチのモニターが取り付けられた。ホッツ氏はそのモニターを見ながら「テスラ車の画面は17インチしかない」と説明する。

 ホッツ氏は、自動走行技術を「一般的な自動車」に適用した姿を世に知らせたいと話している。自動走行車のコンピュータには、Linuxオペレーティングシステムが活用されており、モニターには画面を数字やびっしりと浮かび上がる。自動車のハンドルを動かしたり、点滅をオンにすると、画面内部のいくつかの数字が変化するのだが、これはアキュラの内部制御システムを操作できていることを意味するそうだ。

ジョージ・ホッツ

 ジョージ・ホッツ氏は19歳の時に「ジオホット(geohot)」という名前で活動し、iPhoneのハッキングに成功。キャリアネットワークではなく、他のネットワークで利用できるようにした。次いで、万全のセキュリティシステムを誇っていたソニーの「プレイステーション3」のハッキングに挑戦、成功している。現在は、自動走行車を開発するために、ハッカー生活は休業中だそうだ。

 グローバルIT企業が使用しているセンサーとレーダーおよびソフトウェアは、超がつくほど高価だ。しかし、ホッツ氏はこれに似たような機能を発揮する安価な製品を活用して、ユーザーが1つ13ドル(約1500円)のスマートフォンカメラ6つを購入すれば、あとはホッツ氏のプログラムを活用して自動走行車を使用できるようにしたいとその計画を明かした。ホッツ氏は自身が開発している自動走行車の技術パッケージが、約1000ドル(約12万円)になると予想している。

 ホッツ氏はまた、自身が開発した自動走行技術の核心を、エンジニアにプログラムされた走行ではなく、実際の人が運転しているかのように自然な状況に合わせて走行することだとしている。現在、グーグル、ウーバー、テスラなどのグローバルIT企業や自動車企業が相次いで自動走行事業に参入しているなか、ホッツ氏はその技術に挑戦できるパッケージを販売するために、今後さらなる技術的な検証に努力を傾けるとした。