「自動走行車には今後、道路にある落葉や縁石、水たまりなど障害を検知し、危険がどの程度あるか瞬時に判断できる技術が必要になってくる。もう少し具体的に言うならば、例えば、水たまりが前方にある場合に、それが深いのか浅いのか、もしくは通過できるのか、それとも減速したり、迂回して進むべきなのか判断する技術が求められています。現場では、この手の技術が自動走行車実現に向けてひとつの課題になっています」(日本の自動走行技術開発関係者)
そんな自動走行車の技術にとって、“雪”の存在は大きな焦点となりそうだ。今後、自動走行車が走るであろう気候や環境は、何も晴れの日だけとは限らない。雨ならまだしも、路上に降り積もり、スリップなどを誘発する雪については根本的な対策が必要になる。
米自動車メーカー・フォードは、雪道における安全な自動走行技術を、加熱する無人車開発レースを勝ち抜くための重要な“資産”としてアピールしていく構えだ。今年1月初旬、フォードは「業界内で最初にその技術を達成する」と宣言している。
ミシガン大学(The University of Michigan)には、現実世界における運転環境をシュミレートするため試験施設がある。2015年11月、フォードはそこで自動走行車をテストする最初の自動車メーカーとなった。フォードはすでに一年以上、雪中での自動走行を達成するために、ソフトウェアやセンサーのテストを進めてきた。ただそのフォードでも、実際に雪道で走行テストを開始したのは、「先月から」と広報担当者は話している。フォードで自動車走行技術の開発リーダーを務めるジム・マクブライド氏(Jim McBride)は指摘する。
「これまでのテストは、絶好の天候で自動走行車が走るためのもの。雪が道を覆い、センサーが道路を把握することができない場合、話は全く違ってくる」
冬の天候をクリアすることは、自動走行車の主要な技術的ハードルとして挙げられている。特に雪は、他の車両や車線、信号を覆い隠してしまうため、自動走行車の走行を妨げる大きな要因となる。日本で言えば、沖縄での走行テストだけでは不十分で、東北地方など雪が降る地域にも対応しなければならないということになる。はたして、各国の自動走行車メーカーは、雪の影響を技術的にどうクリアしていくのだろうか。
フォード側は、ライダーセンサーと独自の3Dマップ技術を連携させ、信号や建物および地形など、無人車の周囲の環境を把握することで、冬の気候においても走行可能な技術を達成すると話している。が、米国の自動走行業界関係者たちの話を総合して判断した場合、これは非常に「難しい技術のひとつ」になるそうだ。ただフォードとしては、現在進出しているすべての地域で、将来的に自動走行車を販売したいはず。もちろん、そこには雪が降る地域も含まれるだろう。
現在、ほとんどの無人車メーカーは、降雪環境、もしくは冬季テストの結果を公開していない。Googleは12月にレポートを提出。同社自動走行車部門は「雨天または雪が降る環境でのテストが始まっている」としている。Google社の事情に詳しい米国関係者からは「タホ湖での冬季路面テストもそのうちのひとつ」というコメントもある。
フォードは家庭用エレクトロニクス分野における世界最大の国際展示会「CES2016」で、来年にはテスト用の自動走行車を現在の3倍=30台(晴天時のテスト)まで増やすことを言及している。一方、Googleはすでに、カリフォルニアとテキサスで約50台ほどのテスト車を走らせている。Googleとフォードは、自動走行車の開発で提携する可能性があると報じられているものの、その真偽のほどはまだ明らかになっていない。なお、UBER(ウーバー)なども自動走行車開発に投資を続けているが、その舞台となっているピッツバーグは雪が降る地域である。
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