世界の自動車メーカーが続々と自動運転分野に参入をするなか、中国自動車メーカー「ビッグ5」の1社「長安汽車」が2016年4月から公道テストを開始すると発表。重慶市から北京市までおよそ1800kmの距離で試験走行を行うとしている。中国自動車メーカーとしては初の試みだという。中国自動車専門サイト「網通社」などが1月26日付で報じた。
長安汽車は、中国政府の第12次五カ年計画の期間中(2011~2015年)に160億元(約2880億円)、第13次五カ年計画で300億元(約5400億円)もの巨額資金をスマートカーの開発に投じているという。
同社ではこれまで私有地での試験走行を重ねてきたが、2016年から高速道路での試験運転を開始する予定だ。長安汽車の副社長は「高速道路での走行技術の完成度は現在のところまだ60~70%」とのこと。まずはファミリー向けの中型車での試験走行を予定しているという。長安汽車はまた、すでに中国IT最大手「百度」と高精度ナビゲーションシステム共同で開発している。
中国における自動運転の研究は、2003年に始まっている。国有大手・第一汽車と国防科技大学が共同開発し、自動運転技術を搭載した「紅旗」(VIP専用の高級車)を配備。2011年に「紅旗HQ3」が湖南省長沙から湖北省武漢(約350km)までの自動運転に成功したほか、自動車大手・吉利汽車がスウェーデンのボルボ社を買収した後、ボルボ社の持つ自動運転技術を取り入れ、開発を進めているという状況だ。
ご存知の通り、中国は交通マナーが他の先進国に比べて悪く、道路事情も悪い。逆走やスピード違反、飲酒運転がまだまだ蔓延っているし、幹線道路はもちろん高速道路でも穴や凹凸があるほど。そんな中国で、繊細な動きが要求される自動運転が可能なのか。
ここの興味深い調査結果がある。米ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)の調査によれば、自動運転機能を使用したいというユーザーは全世界平均で6割にとどまったが、中国の自動車ユーザーの平均は75%になったという。その理由として、「自動運転でマナー違反や無茶な運転、下手なドライバーが減るから」ということらしい。
またボルボ社の技術責任者は北米国際自動車ショーで「中国では渋滞が多く、長時間の運転を強いられており、自動運転が他国に比べて求められている」と述べている(『汽車公社』1月14日付)。
先進国に比べて自動運転の試験走行では遅れをとっている中国だが、普及が進めば交通マナー問題も解決できるということか。
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