開催中の東京モーターショーでは、自動運転自動車が話題だ。自動運転自動車を実用化するためには、様々な法的問題を検討しなければならないが、その一つに、「トロッコ問題」というものがある。
トロッコ問題とは、線路を走るトロッコが制御不能で止まれなくなり、そのまま走ると線路の先の5人の作業員を轢いてしまうが、線路の分岐点で進路を変えると、その先の1人の作業員を轢いてしまうとき、進路を変えることが正しいか否か、といった思考実験だ。
これを自動運転自動車に応用すると、たとえば、道路が突然陥没し、ブレーキをかけても間に合わず、直進すれば穴に落ちて搭乗者が死んでしまうというときに、方向転換すれば助かるが、その先にいる5人の小学生を轢いてしまうという場合、自動車の人工知能はどちらを選択すべきか、という問題になる。
最近、この問題に関する海外の研究成果が報道された。仏トゥールーズ第一大学のJean-Francois Bonnefon心理学博士が率いる研究チームが数百人を対象に実施した調査結果によれば、被害者を最小限にするように全自動運転カーはプログラムされるべきという考えが支持された。ただし、同博士は「自分自身は全自動運転カーに乗りたくないという意見がありました」と語ったそうである。
この問題を日本の刑法学の立場から考えると……