ドイツで開催されたドイツ・ハイデルベルグ受賞者フォーラム(Heidelberg Laureate Forum)では、人工知能(AI)やロボットの有用性に関する議論が繰り広げられた。
シェフィールド大学の人工知能およびロボット分野の教授で、ICRAC(International Committee for Robot Arms Control)、RR(Responsible Robotics)財団設立者であるノエル・シャーキー(Noel Sharkey)氏は「人間が作った技術について責任を負わなければならない。現在は巨視的な観点に立った思考が必要な時点だ」と述べた。
シャーキー氏によると、全世界のロボット数は爆発的に増加している。これまで製造業などの分野に導入されてきた産業用ロボットをはじめ、現在ではサービス型ロボットの普及が進んでいる。2014年には470万台のロボットが個人や家庭用に販売されたが、2018年には3800万台のロボットが販売される見通しだ。
シャーキー氏は、ロボットの可能性は無限大であり、ロボットの需要も爆発的に増えているが、この点について、立ち止まって深く考えていかなければならないと言及した。例えば、自動走行車の安全性の問題。シャーキー氏は、人々はまだ自律走行車が人命にどう影響するか知らないとする。一方、自動走行車を開発するメーカーに対しては、確実に安全であるという主張を繰り返すことをやめるべきだと発言。「(人々は)以前、インターネットがどんなものか知らないまま受け入れたように、目を閉じた状態でロボットを受け入れている」と指摘した。
また、機械にどのような権限を移譲するか合意したり、人間の技術的権利を確保する方法も提起された。シャーキー氏は「若い世代の責任は重い。ロボットの問題は、若い世代の将来の問題だ。どのような技術が開発されているか、慎重に考えて対処しなければならない」とした。
この日のディスカッションではまた、アルゴリズムの透明性も議論された。加えて、いつか機械が人間の知能を超える日がくるかも議論されたが、この点に関してはパネラーの間で意見が分かれた。
ドイツ・カールスルーエ工科大学の法学大学院長トーマス・ドライエル(Thomas dreier)氏は、「機械よりも優位に立つことができる人々もいるだろうが、そうなれない人々もいるだろう」と語った。 1994年のチューリング賞受賞者であり、カーネギーメロン大学ロボット工学研究所の初代所長を務めたラジ・レディ(Raj Reddy)氏は、「次に未来技術の進化が起これば、人間がロボットよりも優れているとは限らないと確信する」とした。ともに、ロボットや人工知能が、いつかは確実に人間の能力を越えだろうという示唆だ。とはいえ大多数のパネラーは、それほど早く人間の主導権がロボットに渡らないという点で一致した。
米レンセラー工科大学のコンピュータ、Web、認知科学の教授であるジム・ヘンドラー(Jim Hendler)氏は、「より大きな問題は、人工知能と人間が力を合わせて、人間単体の業績を上回ることができるかどうか。最も大きな脅威は、人工知能そのものではなく、人工知能を正しく活用できない時に起こるだろう」と指摘した。