米マイクロソフトの翻訳機能「Microsoft Translator」の対応言語にアイスランド語が新たに追加された。「Microsoft Translator」のアイスランド語翻訳は、Windows 10、Kindle Fire、Outlook、Microsoft Word、Bing、IOSなどで利用可能だ。
アイスランド語と言えば、人工知能(AI)の影響で近い将来の消滅が危惧されている言語のひとつとして位置づけられている。「Microsoft Translator」開発チームのディレクターを務めるウィリアム・レヴィス氏は今回の開発の目的について、アイスランド語の保護を強調した。
アイスランドの歴史は1100年前に遡る。ノース人の定住とともに「古ノルド語」と呼ばれる言語体系が確立し、その後アイスランド語が誕生したと言われている。ちなみに、現在のアイスランド語話者は40万人にも満たない。
そして、AI社会へと本格突入しようとする今、アイスランド語は世界で広く話されている英語に圧倒され、アルゴリズムによって技術的に最もサポートされない言語の部類に振るい分けられてしまったのだ。欧州の言語学者いわく、この事態は”アイスランド語の終わりの始まりを示唆する出来事”であるという。
この衝撃的事実は、多言語技術に係る欧州協定の締結を目指す学術団体「メタネット」(META-NET)が立ち上げ、200名を超える専門家を動員した共同研究プロジェクトを通じて判明。同プロジェクトでは「メタネット」白書シリーズ30部を解析し、自動翻訳、音声コミュニケーション、テクスト分析、利用可能な言語資源といった4つの観点から言語技術サポート状況を評価した。
アイスランド語の他にも、ラトビア語、ラトビア語、マルタ語が最も消滅可能性の高い欧州言語と判定されている。次いで消滅危機リストに挙がったのがブルガリア語、ギリシャ語、ハンガリー語、ポーランド語などの言語であり、研究対象となった30の欧州言語のうち21言語がデジタル技術の台頭でいずれ消滅し得るとしている。
世界では7千語を超える言語が話されており、そのうち約2千500語がいずれ消滅し得る言語に指定されている。日本ではアイヌ語(北海道)、八丈語(東京都)、奄美語(鹿児島県)、八重山語(沖縄県)、与那国語(沖縄県)、国頭語(沖縄県)、沖縄語(沖縄県)、宮古語(沖縄県)の8言語(方言)が消滅危機リストに挙がっている。
言語(方言)の消滅は、民族のアイデンティティに関わる深刻な問題だ。欧州に倣って、最新テクノロジーによる影響を加味した言語調査に乗り出すことが急務と言えよう。もしかすると、予想だにしなかった意外な言語がリストアップされるかもしれない。
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