LINEがサービス向上のため取り入れている無数の人工知能とは

ロボティア編集部2018年8月30日(木曜日)

メッセンジャーアプリ「LINE」の海外事業を担うLINEプラスは、サービスに人工知能(AI)を統合するさまざまな実験を進めている。一例では、LINEのマルチチャット機能「スクエア」の推薦機能がある。コミュニティが活性化するためには、ユーザーに対して効果的な「推薦」が必要だ。そこでマシンラーニングなど人工知能を使って、1億件におよぶユーザーデータを解析。興味が一致するコミュニティを推薦する。LINEプラスの関係者は、メディア取材に対して次のように答えている。

「アルゴリズムが“休眠利用者”を判断して再利用を促す通知メッセージを送ったり、親密なユーザーのプロフィールや接続状態が変更された際にプッシュ通知を送ります。利用者の性別や年齢、興味はそれぞれ。推薦メッセージの種類に応じて、加入率や直帰率が異なります。そのためそれらを数値化して、カスタマイズされた通知メッセージや、おすすめのコミュニティを推薦する方法を多角的に実験しています」

大量のスパムメールを送り付け、ユーザー離れの原因ともなる「アビューズアカウント」(偽アカウント、迷惑アカウント)を見破る作業にもマシンラーニングが使われている。メッセンジャーアプリ内には、サービスに自動的に登録して広告メッセージを送り付けている迷惑きわまりないアカウントがあるが、これまではユーザーの申告でブロックするしかなかった。しかし、人間の手で処理するには限界がある。そこでLINEプラスでは、アビューズアカウントを登録時点でブロックしたり、活動や友達をつくるパターンを分析しブロックする方法を開発しているという。

メディアファイルを管理するシステムでも、マシンラーニングは威力を発揮する。画像や動画を分析し、不適切なコンテンツを削除する用途である。ラインのメディアプラットフォーム「ピクセル」では、1日2万件程度のデータをフィルタリングするが、ここ1年間でフィルタリングの必要があるコンテンツ量は15倍に増えという。一方、運営スタッフはわずか3倍ほどしか増えていない。業務効率化のカギとなっているのはマシンラーニングだ。人工知能がアダルトコンテンツを分類し、その後、人間が確認するというような協業が行われている。「タイムライン」に、ユーザーが興味を持ちそうな記事を配信するのも人工知能の仕事である。購読率を上げるため、ユーザーの行動データをベースにコンテンツを推薦するという。

その他にも、広告運用にも人工知能が利用されている。広告のクリック率(CTR)を予測するマシンラーニング・アルゴリズムが一例だ。また広告画像の作成には「敵対的生成ネットワーク」(GAN)が使われているという。人工知能導入の成果は大きく、eCPMが2倍上昇したと関係者は話している。なお昨年までは、一日前のデータを使っていたが、最近では「リルタイムマシンラーニング」も導入。1分、もしくは5分前のデータを使えるほどに性能が向上しているという。

「マシンラーニングの競争力は、最終的にはデータ量」と、LINEプラス関係者は言う。現在では、過去のIDと、現在のIDを分析して同一ユーザーであることを判別するのにもマシンラーニングが使われているという。LINEプラスのソン・ミンチョル氏は、人工知能のカテゴリに含まれる技術や活用事例は多様だが、本質的には「データ分析」だと強調している。人工知能はもはや特別なものでなく、LINEの広告プラットフォームだけでも数多くの関連技術が使われているとの説明だ。

Photo by Line Plus HP

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