英レスター大学は、世界屈指の英半導体メーカーであるアーム(ARM)社と共同で、人工知能(AI)のエラーを修正するAIシステムを開発した。通常、AIのエラーを修正するには膨大な時間を要するが、同大学の新アルゴリズムを用いれば、即座にエラーを修正可能であるという。研究内容については、2017年7月31日、人工知能学専門誌『ニューラルネットワーク(Neural Networks)』の電子版に公開された。
新アルゴリズム、すなわちフィッシャー判別分析分類器に基づく線形分類は、確率論的に分離原則を見出し、高い確率で正しい答えとエラーを識別する。大規模なインテリジェント解析システム上での修正が可能であり、指数関数的に増幅するサンプルに対応している。
ビッグデータのマイニングは反復的な機械学習を通じて行われる。そのため、多額のコストと労力を要する。システムを再訓練させるとなると、大量の計算資源が必要となり、さらにコストが上乗せされる。そもそもシステムを部分的に保持し、エラー部分を修正することは不可能である。たとえ修正できたとしても、エラーとは無関係な部分が重大なリスクを負うことになる。
これらの根拠をもって「現行の技術ではシステムを再訓練させることは不可能」と考えた同大学の数学者、イヴァン・タユキン(Ivan Tyukin)博士。そこで生み出されたのが、非反復的、可逆的および非破壊的な手法による修正を実現するアルゴリズムである。
新アルゴリズムはすでに獲得済みの知識にダメージを与えることなく、エラーを基に効率よく学習しながら新たな知識を獲得する。つまり、我々人間と同様、同じ過ちを二度と繰り返さないよう、過ちに基づき即座に学習する能力が備わっているのだ。
AIは常に万能であるはずもなく、致命的なエラーと隣り合わせである。ビッグデータには不確実性の問題があり、性能の向上とともに、エラーの頻発が起こりやすくなる。
こうしたAIの弱みをカバーするかたちで提案されたのが「GAN(Generative Adversarial Networks=敵対的生成ネットワーク)」を取り入れたAI修正システムである。本物に近いイメージを生み出す生成者と、そのイメージを検証する識別者が互いに競い合いながら、人間による介入なしに正解に近いイメージを生成する。
複数の感覚を統合しAIの感覚を拡張したりする場面において有用性が期待されている“教師なし学習”。引き続きGANをはじめ、その対抗馬として登場する“教師なし学習”を実現するAIに注目したい。
photo by Pixabay