太陽の裏側の磁場映像を人工知能「cGANs」で生成に成功...韓国・慶熙大学

ロボティア編集部2019年3月8日(金曜日)

電子技術が発達し宇宙開発が加速するなか、トラブル回避のため、太陽の活動や宇宙の状況を正確に示した情報の重要性が高まっている。なかでも特に重要なデータのひとつに、太陽の磁場の映像データがある。地球から見える太陽の表面の磁場映像は、米国航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星(SDO)に搭載された観測器・HMIなどを通じて確認することができる。HMIは太陽の内部活動と核融合のメカニズム、磁場などを観測する装置だ。

問題は地球からは太陽の裏側の磁場を観測することができない。情報の正確性を高めるためには、裏側の状況も知る必要がある。NASAは太陽の裏面を観測するために、「ステレオ」(STEREO)という観測衛星を2台送っていが、それらの衛星にはHMIが搭載されておらず、太陽の裏面の磁場映像は見ることができない。

そこで今回、韓国・慶熙大学校宇宙探査学科の研究チームが、太陽の裏面の映像をベースに磁場映像を作成する新しいAI技術を開発した。使用されたのは、「条件付きGAN」(cGANs)という教師なし学習技術だ。

研究チームは、2011年から2017年までの、9月と10月を除く太陽の映像をAIに学習させた。AIはSDO衛星が撮影した光学画像であるAIAセンサ映像とHMI映像を4147ペア学習。その後、9月と10月の光学映像825個に対しAIに磁場映像を生成するようにし、実際の磁場の映像と比較して精度を検証した。するとAIが作成した磁場の映像は97%の一致度を示した。

研究チームはそこに加えて、AIAセンサなどと同じ光学特性を有するSTEREOの極紫外線画像(EUVI)センサの映像をAIに学習させた。結果、太陽の裏面の磁場映像の生成に成功。研究チームは、太陽の自転周期を基に予測することができる黒点の位置を通じて、裏面の磁場映像を検証することで、黒点の位置と黒点による磁場の形が裏面でも一致することを確認した。

GANsが天文学のような純粋な科学分野に活用されたのはかなり異例のことだと各メディアは評価している。GANsは、主に映像や音声信号を生成する分野で主に使われている。偽動画である「ディープフェイク」もその一例だ。研究チーム関係者は、工学分野においては多く使われるが、純粋な科学分野では活用事例はほとんどないと説明している。

Photo by 慶熙大学校