写真批評家・飯沢耕太郎氏に聞く「写真と写真家と人工知能」の未来

人工知能が人間の写真文化を席巻するか、はたまた人間が人工知能を使いこなし新たな写真文化を生み出せるかは、現段階で未知数だ。それでも、人工知能が高度な画像を量産するようになることで、社会全体に大きな影響を及ぼしていくことはほぼ間違いない。その影響の中身は、誰しもが画像を簡単に手にできるというメリット、そしてそれに負けず劣らず大きなデメリットがワンセットとなるだろう。

前述のGANで生成された写真は、もはや本物かどうか見分けがつかないほどのクオリティーを誇り始めている。例えば、そんな写真がインターネット上に大量に流通しだしたとしたらどうか。おそらく、人々は画像に写った内容を真実として捉えてしまうだろう。フェイクニュースを、完成度の高い「フェイク画像」が補強していくことだってあり得る。特定の対象者を狙い撃ちした、リベンジポルノならぬ、フェイクポルノが大量に出回る可

能性も否定できない。ちなみに韓国ではすでに、GANを使ったフェイクポルノによる性的被害が問題視され始めており、今後、生成された性的な偽画像・動画を流布させた犯人を名誉棄損などだけではなく、性犯罪処罰法の範疇で裁けるよう法改正の議論が始まっているという。

AIによる写真の量産はまた、学問の世界にも大きな混乱を及ぼすと予想されている。例えば、天文学者が地道な研究の結果として撮影に成功した宇宙空間の写真、地理学者が撮影した火山の爆発シーンなどの写真なども、画像生成AIを使えば簡単に生成できてしまう。ただ人間にはその真偽を判断できない。結果、学説のねつ造や、真実が捻じ曲げられてしまうという現象も起こりうる。

「過去とは違い、現在では人工知能を容易に開発できる環境やツール、アプリケーションが整いつつあります。頭の良い高校生なら作れてしまう。AIはそんな代物になるでしょう。AIやAIが生み出した写真が氾濫する時代は、すぐそこまで迫っています。将来的に人間がいかにデメリットを回避していくか。その知恵が試されていくはずです」(前出、A氏)

最後にもう一度書きたい。写真はテクノロジーそのものだ。その進歩は、常にテクノロジーの発展とともにあった。では、写真とAIが融合する時代にはどうか。人間はAIを使って新たな写真文化を生み出すことができるのだろうか。はたまた、AIが生み出す大量のイメージに埋没し、写真の担い手としての役割を終えるのだろうか。いずれにせよ2018年を境に、写真を巡る人間と人工知能の関係はより先鋭化していくはずである。

■本原稿は月刊サイゾー6月号に掲載されたものを転載しています

河鐘基

記者:河鐘基


1983年、北海道生まれ。株式会社ロボティア代表。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長・運営責任者。著書に『ドローンの衝撃』『AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則』(扶桑社)など。自社でアジア地域を中心とした海外テック動向の調査やメディア運営、コンテンツ制作全般を請け負うかたわら、『Forbes JAPAN』 『週刊SPA!』など各種メディアにテクノロジーから社会・政治問題まで幅広く寄稿している。