10年後の未来では面接やデートはオンライン分身がこなす!?

ロボティア編集部2015年12月8日(火曜日)

 11月16日、米ワシントン州立大学のコンピュータサイエンス・工学科ペドロ・ドミンゴス(Pedro Domingos、上写真)教授は、16日にウォールストリート・ジャーナルで機械学習(machine learning)分野の発展について現状と展望を紹介しつつ、「10年以内にオンライン分身(alter ego)が、私たちの代わりに面接や交渉を行うようになるだろう」と断言した。

 オンライン分身は自分の代わりにさまざまなタスクをこなしてくれる、デジタル世界のもうひとつ(ひとつとは限らない)の自分を指す。

 現在すでに、GoogleやAmazonなどいくつかの会社がユーザーの情報を収集、各社が開発する機械学習アルゴリズムを使用して、潜在的な要求がある商品を予測、販売する方法を模索している。これも見方によっては、自分の分身がデジタル世界で生成されている萌芽ともとれる。しかしこれらのアルゴリズムと、ドミンゴス教授が指摘するオンライン分身は大きく2つの点で異なる。

 まず、Google、アマゾンのアルゴリズムはユーザーの便宜を図りもするが、同時に自社の利益を追求する。そもそも本来の目的は後者であり、建前としてユーザーに最適化した広告を示すだけだ。しかも、その選択された広告は広告主が提示するものである。

 次にGoogleやAmazonが作る分身は、ユーザーの検索履歴や購入履歴という断片的な情報だけを持って作成されたものに過ぎず、ユーザーのすべてを理解、再現しているとはとても言い難い。現在、個人の情報が多ければ多いほどより正確な分身を作ることができるが、ユーザー自ら、すべての情報を企業に任せるという風にはなっていない。あくまで、自分に関する情報は自分が管理しコントロールしている。

 が、ドミンゴス教授は今後、銀行のように、個人のすべての情報を預かり管理する新しいタイプの企業が登場するだろうと予想。また、いわゆるこの“個人情報銀行”は、人類史上初となる数兆ドルのビジネスになるとも指摘している。

「初めて銀行が生まれた時、銀行にお金を預けるのは危険で疑わしいことだった。同じく自分のすべての情報をとある会社に任せてデジタル分身を作るという行為は危険ように見えるが、すぐに当然のこととして受け入れられるようになるだろう」(ドミンゴス教授)

alter ego オンライン分身
photo by Yoppy Yohanes

 個人情報銀行は、ユーザーが手数料を払えば、ユーザーがデジタル世界で行う活動情報のすべてを収集、安全に保管し、ユーザーの分身作り出し、ユーザーが望むように他人のオンライン分身と相互作用するようになるというのだ。

 ドミンゴス教授はオンライン分身が生まれる前提として「大きな技術的障壁はない」としている。スマートフォン、デスクトップコンピュータなどを通じて行われるユーザーのデジタル世界で活動情報をすべて、媒体(middleman)となるコンピュータを経るようにすれば良いとうのだ。クラウド内に自身のすべての情報を統合・整理すれば、機械学習技術を活用し、ますます完璧な自分の分身を作ることができる。

例えば、将来的にSNS内に求職ボタンが設置されるとしよう。それを押すと、デジタル分身がスペックに合わせいくつもの求人会社の人事担当者分身と超高速で「面接」を行い、その結果として自分に最も適した仕事のリストが提示されるという未来が予想できる。

 もちろん、デジタル分身は決して“ひとり”ではないので、その間、他のデジタル分身が欲しい商品購入のために売り手と購入交渉を行うという状況も想像できる。何千人もの分身がそれぞれデートしながら、最適な恋人を選ぶ日が来るかもしれない。

「未来のサイバースペースは“分身の社会”になるだろう。その巨大な平行世界で分身が最も適したものを選んでくれるので、私たちは現実世界でそれらを実行すればよい」(ドミンゴス教授)

 情報化社会は人々の人生に無数の選択肢をもたらした。これはすでに紛れもない事実だろう。今後オンライン分身は、生身の人間の代わりにデジタル世界で無数の試行錯誤を繰り返し、最適な選択肢をユーザーに提供するようになるということだろうか。もしかすると「失敗から学ぶ」という格言は、古き良き時代の産物になる日が来るのかもしれない。ただし、本当にデジタル分身が当たり前の存在になるのか、またそれが人間の幸せに直結するかどうかはいまだ持って定かではない。

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