「ゴールドマン・サックスのスタッフは、財務分析プログラム『Kensho』を使用。その効果に驚き隠せなかった。彼らが一週間もの時間を要したり、スタッフを雇用し処理していた仕事を、Kenshoが瞬く間にやってのけたからである」
ニューヨークタイムズは2月27日、世界的な投資会社ゴールドマン・サックスが利用する「Kensho」を大々的に取り上げ「ロボットがウォールストリートに侵攻(Invading)した」と報じた。ロボットが人間の仕事を次々に代替えすると予想されているなか、金融・投資など専門職もその例外ではない。
Kenshoは、企業の業績と主要経済数値、株価の動きなど膨大な量の財務データを分析し、投資家の質問に答えるプログラムである。例えば、シリア内戦が経済に与える影響を把握するために、「シリア内戦激化(Escalations in The Syrian war)」と入力すると、わずか数分で、米国とアジアの株価の変動、天然ガスと原油価格の動き、さらにはカナダドルの為替レートの変化など、様々な情報をまとめて提示する。
Kenshoテクノロジーの創業者ダニエル・ナドラー(daniel nadler)氏(32)は、「50万ドルの年俸をもらっている専門アナリストが40時間かけて行う作業を、Kenshoは数分で処理することができる」と述べた。
ニューヨークタイムズは、そのようなシステムの導入を受け、近いうちにゴールドマン・サックスで大規模な人員調整が行われる可能性があると分析している。実際に、2006〜2010年にゴールドマン・サックスで株式取引業務を担当していたポール・チュウ(Paul Chou)氏は、「ゴールドマン・サックスに自動株式取引プログラムが導入された後、株式取引10人分の仕事を、プログラマ1人が行っている」とした。
Kenshoのような人工知能ロボットの登場は、金融界の大量失業を予期させる。 2013年、英オックスフォード大学の研究では、米国の雇用の約47%がロボットに置き換えられると予想されたが、なかでも金融業界は54%で平均より高い数字が見込まれていた。
情報の収集および分析に関わる職種は、ロボットの方が得意だ。ナドラー氏は「多くのベンチャー企業が金融プログラムの開発に飛び込んでいる」とし「今後10年以内にKenshoのような人工知能プログラムが、金融界の仕事の半分を奪う」と警告した。
Kenshoは、ハーバード大学を卒業したナドラー氏らが2013年に設立したベンチャー企業で、従業員の数はわずか50人だ。昨年夏には、グローバル投資銀行JPモルガン、米銀行最大手バンク・オブ・アメリカ(BOA)ともプログラムの供給契約を締結した。ナドラー氏は「私たちが大規模な雇用を破壊するという事実は自覚している(中略)ロボットに対する政府の規制がなければ、労働界の被害は非常に大きくなるだろう」とニューヨークタイムズに述べている。
photo by Kensho HP